iaku『エダニク』
作:横山拓也 演出:上田一軒
「この建物の塀を越えた途端、どうしてウチの豚はモノになっちゃうんですか?」
「CATTLE」が「BEEF」に、「PIG」が「PORK」になる境目で、男たちの社会と労働を描く―。
2009年の初演時、その強度のある会話の応酬が高く評価され、
第15回日本劇作家協会新人戯曲賞を受賞した代表作『エダニク』の上演です!
本公演は終了しました
2016年 6月3日(金)〜12日(日) 全12公演
上演時間 約1時間45分(途中休憩無し)【全席自由】 (日時指定) (整理番号付) |
会員 前売2,500円・当日2,700円 一般 前売3,000円・当日3,200円 U-22(22歳以下) 前売1,500円・当日2,000円 高校生以下500円(前売・当日とも) *早期観劇割引・平日マチネ割引の公演は、会員・一般のみ各300円引き。 *「U-22」及び「高校生以下」は、いずれも公演当日の年齢。 |
* | 中学生以上の方は公演当日に学生証または年齢が確認できるものをご持参ください。 |
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500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで) *未就学児は入場できません。*6/4(土)のみ |
【 作 】 | 横山拓也 |
【演 出】 | 上田一軒 |
【出 演】 | 緒方 晋(The Stone Age)、村上誠基、福谷圭祐(匿名劇壇) |
☆...早期観劇割引 ★...平日マチネ割引 【託】...託児サービス実施
【あらすじ】
とある食肉加工センター。ある日、
【MITAKA ARTS NEWS】 *下方に掲載されているインタビューとは別のインタビューです。
【劇団「iaku」プロフィール】
劇作家・横山拓也による演劇ユニット。アンタッチャブルな題材を小気味良い関西弁口語のセリフで描き、他人の議論・口論・口喧嘩を覗き見するような会話劇を発表している。ほとんどの作品で上田一軒氏を演出に迎え、関西の優れた俳優を作品ごとに招くスタイルで公演を行う。繰り返しの上演が望まれる作品づくり、また、大人の鑑賞に耐え得るエンタテインメントとしての作品づくりを意識して活動中。代表作:「エダニク」(第15回日本劇作家協会新人戯曲賞2009年)、「人の気も知らないで」(第1回せんだい短編戯曲賞大賞2013年)
HP|http://www.iaku.jp Twitter|@iaku_info
【今回の公演に寄せて、作家の横山拓也さんからのメッセージ】
「エダニク」は食肉解体加工市場を舞台にした作品です。この作品の特徴のひとつに、「現代の屠場に従事する人々の会話をリアルに描いている」部分があります。私は執筆当時(2008年12月)、屠場へ取材に訪れました。牛や豚が食肉となるには、職人の技術が必要です。私たちはそのことを頭で分かっていながら、目に触れることがないため、あまり意識することがありません。物語は、屠場で働く労働者2人とそこにやってくる若者が、「屠畜」「労働」「生活」について三者三様の価値観をぶつけ合う中で、俯瞰の視点で、家畜が食肉に変わる境目に何があるのかを描いていきます。どうぞご期待ください。
【横山拓也 プロフィール】
1977年1月21日生まれ。大阪府出身。劇作家、演出家、iaku代表。鋭い観察眼と綿密な取材を元に、人間や題材を多面的に捉える作劇を心がけている。他人の口論をエンタテインメントに仕上げるセリフ劇や、ある社会問題を架空の土地の文化や因習に置き換えて人間ドラマとして立ち上げる作品を発表している。代表作:「エダニク」(第15回日本劇作家協会新人戯曲賞2009年)、「人の気も知らないで」(第1回せんだい短編戯曲賞大賞2013年)

鋭い観察眼と綿密な取材を元に、骨太な会話劇を創り続け、
今、演劇界で大きな注目を集める、劇団iakuの横山拓也。
そのiakuの代表作である『エダニク』の再演を前に、
作家の横山さんと、演出の上田一軒さん、そして、出演の緒方晋さん、
村上誠基さん、福谷圭祐さんに、お話をうかがいました。
今回、公演のご相談を差し上げた時、この『エダニク』を再演したいと思われた理由を教えてください。
横山拓也横山 2014年の10月にMITAKA “Next” Selectionに選んでもらって、三鷹の星のホールで『流れんな』という作品を上演した時に、ありがたいことにたくさんのお客さんに観ていただけて、好評のうちに幕を降ろすことができたんです。iakuは大阪の劇団なんで、なかなか東京への足掛かりも無くて、こっちに友人も少ないから自分らでチケットを売るのも大変なので、観てくださる人が増えたのが本当に嬉しくて。そんな中、「再び三鷹で」と声を掛けていただいたので、ここは勝負どころやなと。そしたらここはもう、iakuの代表作である『エダニク』を上演するしかないなと。実は『エダニク』は今回で3回目の再演なんですが、前回の東京公演(2013年2月/池袋アトリエ・センティオ)では150人くらいの人にしか観てもらうことができなかったんです。今、少しでもiakuに注目していただいている方や、一度観てみたいと思ってくださっている方に、ぜひ『エダニク』を観てほしいと。そんな思いで上演することにしました。
初演(2009年2月/大阪:トリイホール)から演出を担当されている上田さんには、横山さんからご相談はあったのでしょうか?
上田一軒上田 いえいえ。いつもと一緒です。「『エダニク』やります」って言われて、「ほう、そうかあ」って(笑)。
演出的に、今回はこうしようとか、思われてることはありますか?
上田 横山くんの脚本は普遍的で、再演に耐えうる作品が多いのですが、特にこの『エダニク』は、何度でも再演していける、力のある作品やと思うんで、さっきの横山くんの発言やないですが「ここで、この作品で来たか」という感じですね。
緒方さんは、初演からずっと出演されていますね。
緒方晋緒方 初演の時は、演出を受けながら「何を求められているのか判らない」その連続の稽古やったのを覚えています。とにかく、ただただ必死でしたね。それから2回再演して、その都度、この芝居の緊張感の凄さに圧倒されて、公演が終わると毎回「まだまだできることあったんじゃないか?まだまだ取りこぼしてることあるんじゃないか?」という気にさせてくれる舞台なんです。男3人だけでガッツリ組む芝居なんですが、今回メンバーも2人変わりますし、また確実に進化するという予感がありますね。あとは、またあのセリフを全部覚えるのかと思うと、ちょっと気が遠くなりますけどね(笑)。
3人芝居で、全員すっと出ていらっしゃって、セリフの量も膨大ですものね。
緒方 いやほんと、手強い作品なんですよ。ただその分、やりがいがあるのは確かなんです。男3人で濃密な会話劇を繰り広げるんで、ちょっとでも気を抜いたら大変なことになってしまう怖さはあります。だから集中力が必要だし、ものすごいエネルギーがいる。でも逆に、全てが合わさった時の破壊力と言うか、舞台から放たれるパワーは半端無いです。とにかく、この作品に出演することが出来て、僕の役者としての考えも大きく変わったし、その後出演させていただく作品もすごく変わりました。自分の中では、とても大事な作品ですね。
福谷さんは、今回『エダニク』には初出演ですが、実際の舞台はご覧になってますか?
福谷圭祐福谷 いえ、観てないんです。脚本を読ませていただいて、とても面白くて、すごく楽しんでやれそうだなと思って、ぜひ出たいとお伝えしたのですが……。実はまだ、どの役か告げられてなくて……(笑)。多分、合ってると思うんですが(笑)。
横山 伊舞役ですが……。
福谷 よかった(笑)。合ってました(笑)。
ちょうど、今公演中の作品(2015年11月「walk in closet」)で、iakuへの初参加となった訳ですが、iakuの舞台はいかがですか?
福谷 ものすごく考えることが多い現場だなと思います。一生懸命考えないと演技って出来ないんだなという、当たり前のことに気付かされましたね。演出家の上田さんは、理想の舞台というか、目指す所がはっきりと見えていらっしゃる方で、それを丁寧に役者に伝えてくださるので、懸命に咀嚼する毎日です。でも今、役者7人の座組なんですけど、『エダニク』は3人ですし、全員ずっと舞台上に出ていますので、おそらく稽古も、無駄な時間は一切無いんだろうなと(笑)。もちろん、3回目の再演となる作品に、初めて参加するというプレッシャーも、相当感じています。
横山 福谷くんは、自分で劇団(匿名劇壇)を主宰して、作・演出もやっているので、役者だけの人とは、作劇現場の見方も少し違うのかなと思いますね。実際、iakuの舞台に自らが作・演出をされている人が出演されるのは初めてなんで、その点からも、役者の福谷君を楽しみにしています。
村上さんもiakuは初めてですね。
村上誠基村上 僕は、今回の『エダニク』が全くの初参加です。ちなみに僕も、脚本を読んだだけで出演を決めたのですが、役名は告げられています(笑)。実は、オファーをいただいて脚本を手渡された時は、ある舞台の本番期間だったので、その公演に集中するためにも「公演が終わってから読んで、それからお返事しよう」と思っていたのですが、どうしても気になって「ちょっとだけ」と思って読んだら、もう面白くて一気に最後まで読んでしまって(笑)。あと、僕は出身劇団(柿喰う客)が激しく動きまわる劇団だったせいか、退団後もそういうタイプの舞台が多かったので、男3人の濃密な会話劇に呼ばれたのはとても嬉しくて、「ああ、長く芝居をやってきてよかった」と思いましたね(笑)。
今回の3人は、横山さんと上田さんで相談して選ばれたのですが?
横山 今まで、キャスティングは僕だけが担ってたんですが、今回は4回目の『エダニク』ということで、一軒さん(上田さん)にも相談しました。でも一軒さんは、イメージは伝えてくれるけど、具体的な名前は出て来ないというか、あんまり役者さんを知らないみたいで(笑)。でも、そのイメージを共有できたのは大きくて、それを元に僕が選んで「一軒さん、あの役、この人でどう思います?」「ええんやないかなあ」って感じでしたね(笑)。その上で、伊舞(いまい)役と沢村役なんですが、今まで演じてくれた役者さんも年齢が上がってきて、もともとの脚本の年齢設定と離れてきてしまったので、今回思い切って変えたという経緯があります。ただ、玄田(げんだ)役の緒方さんだけは、どうしても変えられない。実は以前にも『エダニク』の再演を思いついて緒方さんに連絡したことがあったんですが、「残念やけど、その時期は無理やでえ」と言われたんで、別の公演にしたこともあるくらい、この玄田役だけは、緒方さんが絶対必要やと思ってるんです。あと、玄田役だけは何歳の設定でもいけるので(笑)、だからこの役は、私の中では不動でしたね。
沢村役の村上さんと、伊舞役の福谷さんの、決め手は何だったのでしょうか?
横山 村上さんは、とある舞台を観た時に、とても上手いし、とにかく声質がいいなと思いまして。長ゼリフでも“スー”っと耳に入ってきて、すごく惹かれる声だなと。だからいつか出演してもらえたらと思っていたのですが、関西弁の芝居が多い僕の作品の中で、この沢村役と伊舞役は珍しく「標準語」なんですよ。だから「ここだ!」と(笑)。福谷さんの伊舞役は、今まで「背が高くて男前」の役者が担っていたので、「福谷君は背は高いけど……男前は微妙かな」と思ったんですが(笑)、でも、せっかくの『新生エダニク』だし、彼なら背がどうとか、男前がどうとかでなく、舞台がきちんと成立すると思って、一軒さんに「伊舞役、福谷君でどうかなあ?」と口にしたら「ありありありあり!」と一致したので(笑)、お願いすることにしました。だから、とても満足のいく役者さんを得たので、今、勝算としては130%という感じですね(笑)。
作家の横山さんはそう仰ってますが、演出の上田さんは?
上田 その前に……。実は僕、さっきまで、舞台上の村上さんを観たことが無いと思ってたんだけど、話を聞いているうちに、観たことがあると判りました(笑)。
横山 いやあ、このインタビューやってよかった(笑)。
緒方 上田さん、その舞台観た後、打ち上げにも参加してましたやん(笑)。
上田 そうだ。行った(笑)。
期せずして、村上さんの役者姿をご覧になっていたことがわかりましたし、今回の公演への上田さんの自信度も上がったんじゃないかと思いますが(笑)。
上田 う〜ん(笑)。
横山 俺なんで急に130%なんて言ったんやろ(笑)。
緒方 しかも中途半端な、ややこしい数字(笑)。
上田 この流れで数字言うのかあ(笑)。なんか大喜利みたいで、無理やわあ(笑)。
横山 演出家は慎重やから(笑)。
上田 実は、前回の再演の時も俳優が一人変わったんですけど、結果、上演時間が10分伸びたんです。それくらい俳優によって舞台も変わるんですが、今回は、面白さへの期待が高いから……。まあ取りあえず、100%かな(笑)。
横山 あっ、言うんや(笑)。勝算が高くて、ほっとしました(笑)。
その勝算の数字を受けて、役者の皆さんはいかがですか?
村上 先程、緒方さんが、「この作品で、役者としての考え方や、仕事が、大きく変わった」と仰っていたので、あやかりたいなと(笑)。
緒方 大丈夫、変わるから(笑)。もう確実に変わるから(笑)。
村上 それを信じて、一生懸命頑張りたいです。あと、皆さん、優しそうだし、よかったなと(笑)。
緒方 なにそれ(笑)
村上 基本、怖い人が苦手なんで(笑)。今日、集合場所に行った時「デカ」と思いましたもん(笑)。
横山 確かに、福谷さんは大きいし、緒方さんはこわもて強面やし(笑)。初対面だと、ちょっと怖いですね(笑)。
村上 このインタビューで、その怖さが払拭できました(笑)。今日インタビューがあって、よかったです(笑)。
福谷さんはいかがですか?
福谷 皆さんと話をすればするほど燃えてきました(笑)。実は、このオファーをもらう前に、自分の劇団の公演を「6月にやろう」と、会議で決めていたんです。でも、声を掛けてもらって、脚本読んだら面白くて「どうしよう、出たい」と(笑)。それで、劇団員に「ごめん、6月で決定したの、無かったことにして」と謝って(笑)。それくらい出演したい気持ちが強かったんです。
横山 劇団公演はいつになったの?
福谷 8月にしました(笑)
他の劇団員の反応はいかがでしたか?「頑張れ」と言ってくださいましたか?
福谷 「えー」と言ってました(笑)「なんやねん」と(笑)
劇団員の方たちが観劇にいらっしゃった時に「なるほど、この舞台なら」と言ってもらえるような舞台にしないといけませんね。
福谷 燃えています(笑)。
緒方さんはいかがですか?
緒方 もちろん、この3人による、新しい『エダニク』の誕生にはワクワクしています。でも前回、役者が一人変わった時に、その役者は初演も再演も出ていて、家庭の事情でどうしても芝居ができない状況になってしまったんですけど、公演を観に来てくれたんですよ。そしたら、帰りの電車の中で「緒方さん、やっぱ俺、あの役やりたいわ。悔しいわ。」て、言うんですよ。今回は更に2人変わって、初演からの役者は俺だけになってしまったけど、この作品においては、出られない奴らの思いも背負って舞台に立ちたいなと、その重みを感じながら演じたいなと、強く思っています。
ありがとうございます。それでは横山さん、この『エダニク』を書かれた頃のことを教えてください。
横山 劇団の公演ではなく、プロデュース公演の現場から、脚本だけ依頼された作品でして、上田一軒さんと初めて組ませていただきました。2009年2月の初演ですから、おそらく2008年の後半に書いたと思うんですけど、その頃、所属していた劇団(作・演出を担当)も伸び悩んでいて、僕自身も何をやっても上手くいかなかった時期だったんです。例えば、とある作品を戯曲賞に応募した時なんて、公開選評会で審査員にボロカスに言われて(笑)。いやほんと、クソミソに言われて呆然としていたら、黙って座っているだけなのに、涙が“ツー”っと頬を流れるんですよ(笑)。大人なのに(笑)。
村上さん怖いですね(笑)。村上さんの苦手な「怖い人たち」の話ですね(笑)。
村上 もう、考えただけで背筋が凍ります(笑)。
横山 そんなこんなでいろいろあって、すべてを投げ出したいと思っていた頃だったので、「劇団以外からの脚本依頼」が嬉しくて、とにかく遮二無二書きました。書く動機とかテーマとか、もちろんあったのですが、それよりも何よりも、ただひたすら書いた。今思い出しても、怖ろしいほど集中してましたね。
完本した時の、皆さんの反応はいかがでしたか?
横山 稽古場に持って行って、読んでもらったんですけど、皆、難しい顔をしたままで、誰も褒めてくれませんでした(笑)。で、皆さんから言われたことを書き留めて、「一週間だけ時間をください」とお願いして、懸命に書き直しました。とにかく書いて直して、書いて直しての連続で、公演の初日は「必死で泳いでいたら、いつの間にか島に辿り着いた」って感じでしたね。
上田さんは、初めて脚本を読んだ日のことを覚えていらっしゃいますか?
上田 素晴らしいと思いました。これはいい作品だと。褒めるのがおこがましいくらい素晴らしかった。だから、修正したほうがよさそうなところだけを、淡々と言ったんです。
横山 それならそうと、あの時言って欲しかった……(笑)。
緒方 いやほんと、脚本は面白いってみんな言うとったよ。でも、何回も書き直しが来るから、その度に、深夜に役者3人でカラオケボックス行って、必死で覚えた(笑)。まあそうやって、苦労して生まれた作品だったけど、観に来てくれたお客さんが口々に「面白い!」って言うてくれるし、実は俺も、役者辞めようかなと思ってた時期やったんやけど、「もう少しやってもええかな」と思えた舞台やった。そういう意味でも、とても大事な作品ですね。
では最後に、上田さんと横山さんから、お客様へのメッセージをお願いします。
上田 軽快な会話が進んでいく中で、いつの間にかいろいろな人間関係が浮かび上がっていく「会話で魅せるエンターテイメント」。それが『エダニク』という作品の魅力です。横山君が創りあげる人間ドラマを、お楽しみ下さい。
横山 チラシを見たり、このインタビューを読まれたりして、少しでもiakuに興味を持ってくださったら、ぜひ、この『エダニク』を観てほしいと願っています。大人の方から、若い方まで、すべての世代が楽しめる作品だと思います。劇場でお待ちしております。
本日はありがとうございました。
インタビュアー 森元隆樹(三鷹市芸術文化センター 演劇企画員)