大空に響け、歓喜の歌 人生への希望にあふれて
トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ
(管弦楽)
沼尻竜典(音楽監督・指揮)
伊藤 晴(ソプラノ) 小林久美子(アルト)
小堀勇介(テノール) 駒田敏章(バリトン)
本公演は終了しました
2015年12月19日(土)、20日(日) 各日15:00開演
【全席指定】 | 各回 会員4,500円 一般5,000円 *U-23(23歳以下)2,500円 |
* | 中学生以上の方は公演当日に学生証または年齢が確認できるものをご持参ください。 |
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500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで) *未就学児は入場できません。 |
【出 演】 | 沼尻竜典(音楽監督・指揮) 合唱指揮:栗山文昭、合唱副指揮:片山みゆき 合唱:武蔵野音楽大学室内合唱団 伊藤 晴(ソプラノ) 小林久美子(アルト) 小堀勇介(テノール) 駒田敏章(バリトン) |
【曲 目】 | 武満 徹:小さな空 武満 徹:うたうだけ ベートーヴェン:交響曲第9番 op.125『合唱付き』 |
TMP第71回演奏会では創立20周年を祝い、新たなスタートを切るに相応しい作品として、実に13年ぶりにベートーヴェンの交響曲第9番をメインに取り上げます。
第一部では、昨夏の定期演奏会でご紹介した武満徹の無伴奏合唱作品を、武蔵野音楽大学室内合唱団の演奏でお贈りします。「小さな空」は、武満自身が詩を書いたラジオドラマ『ガン・キング』(1963年)の主題歌です。青空、夕空、夜空、それぞれ表情の異なる空と子どもの頃の甘く切ない思い出がノスタルジックに、美しくシンプルな旋律にのって歌われます。「うたうだけ」は1958年に作曲、「ブルースの継承」と題された草月ホールでのコンサートで演奏されました。詩は谷川俊太郎によるものです。実は、沼尻竜典の伯母と武満は小学校の同級で、沼尻は武満の家に遊びに行ったこともあるそうです。さらに沼尻はDENONから3枚の武満作品のアルバムをリリースしています。うち2枚は武満立ち合いの下で行われました。
第二部では、ウィーン古典派を代表する作曲家の一人で、ロマン派音楽の先駆者としても知られるベートーヴェンの交響曲第9番を演奏いたします。この作品は、交響曲の作曲において常に革新的なアイディアを試みてきたベートーヴェンが、それまでにない大きな編成で独唱、混声合唱を導入し、ティンパニ以外の打楽器も使用するという当時としては斬新な作曲法で書いた作品です。
最終楽章に用いられた歌詞は、文豪シラーの詩「歓喜に寄す」をベートーヴェンが抜粋し、自ら編集したものです。「歓喜の歌」として広く親しまれているこの楽章の第一主題は、後に欧州議会、欧州連合によって「欧州の歌」に採択されました。このいわば"人間讃歌"をTMPのオペラ・プロジェクトに出演した4人のソリストが、合唱団と共に高らかに謳い上げます。
C.P.E.バッハ、ハイドン、そしてベートーヴェンへと至る交響曲の系譜を皆様にご紹介し、日本の現代音楽を代表する三善晃、武満徹の作品も近年積極的に取り上げてきました。これらの試みが結実する演奏会と言えましょう。どうぞご期待ください。
友の会MARCL(マークル)謝恩企画のチケットプレゼントはお申込終了いたしました。

──沼尻さんには開館前からお世話になり、三鷹市芸術文化センターも20周年を迎えることになりました。
おめでとうございます。開館前の準備段階からホールに通って音響のチェックなどをお手伝いしましたから、20年以上の関係になりますね。
──トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ(TMP)の結成当時はいかがでしたか。
室内楽をやる場合も十分に通用するメンバーを集めようというコンセプトで、同級生や後輩などに自分で声をかけたんです。留学から帰ったばかりの人や、在京のオーケストラに入団したばかりの人など、フレッシュな方々が集まりました。メンバー交代もありましたが、20年続けてこられたのはすごいことだと思います。
当初はその名の通り「モーツァルトを聴こう」というシリーズのために活動を始めました。モーツァルトはピアノ曲、声楽曲、室内楽、オーケストラ、オペラまで、色々なジャンルの曲を書いたので、多彩なプログラムが組めました。そしてシリーズが好評のうちに終了した後も、定期演奏会という形で活動がずっと続いているのです。これは当初の予想を超えていますし、レパートリーもバロックから現代まで広がってきて、外部からの依頼公演も引き受けるようになりました。
──思い出に残っているプログラムは何でしょうか。
モーツァルトのオペラシリーズですね。これまでに『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』を2回ずつ演奏しています。通常のオペラのように舞台上にセットを組んで演技をするスペースはないので、照明などだけでイメージを作っての演奏会形式です。そうすることで、モーツァルトの音楽そのものの完成度の高さが改めてよくわかり、逆に演出がない方がいいとさえ思う程の充実した公演になりました。
──沼尻さん自身のご活躍は今や世界にまで広がっていますが、そういった影響はTMPにもありますか。
僕だけでなく、それぞれのメンバーが違うオーケストラなどで活動をして、そこで色々な指揮者やソリストと仕事をして、良い経験や、たまには苦い経験を積んでここに戻ってくる。ずっと同じメンバーで活動するオーケストラにはない多様性・雑食性が、TMPの面白さになっていると思います。創立メンバーは今や、各プロオーケストラの重鎮です。
──40人というサイズについてはいかがでしょうか。
風のホールのサイズに合わせて40人編成にしました。この程度の人数だと、ベートーヴェンが書いたひとつひとつの音符まで細かくきちんと表現することができて、大きなオーケストラにある迫力とは別の面白さが出てきます。また、一番後ろの席の人まで主体的に演奏している感じになるので、音楽の躍動感がハンパないですね。学校のクラス一つ分なので、意見交換も活発でリハーサルも楽しいですよ。
──沼尻さんには小学校での授業もしていただいていますね。
今は色々なゲームやスポーツなど、昔よりも楽しみが色々あるわけですが、その中で音楽の素晴らしさを子どもたちに伝えていく努力はとても大切なことだと思います。最初は「つまらない」と言われても、例えばセロリやにんじんが食べられない子に、「こういうところがおいしいんだよ」と丁寧に色々なやり方で教えるような根気を持って、良さを伝えていく。たまには細かく刻んだりして、わからないように食べさせたりもする(笑)。そうしないと子どもは「ご飯よりお菓子を食べたい」と、どうしてもわかりやすい方に行ってしまいますから。ただ本当にすごいものには無条件で良い反応が来るので、こちらも全力で行かないといけません。
私が体育館という子どもたちの日常の空間に入って、子どもと同じ目線で音楽の授業をするのも意味あることですが、ホールという非日常の空間に来てもらう、ということもぜひ実践したいですね。劇場やホールに行くというのはひとつの習慣なんです。切符を買って席を探し、プログラムを読んで、幕が開くのをワクワクしながら待つという経験を小さいうちから始める。そうすれば大人になってからも、ホールに通ってくれるでしょう。「非日常のワクワクは、こんなにおうちから近いところにもある」と思ってもらうことも大切だと思います。
──12月のTMPは13年ぶりにベートーヴェンの交響曲第九番ですね。
最初、TMPの編成で第九は無謀かとも思ったのですが、やってみたら大変良かったのです。その時の演奏はCDになっています。チケットも即完売でした。今回のソロの方たちは若手のホープばかりなので、難曲として有名な「第九」を、きっと簡単そうに歌ってしまうでしょう。また、この13年間TMPも成長してきているので、特に前回お聴きになった方には、進化したTMPを感じていただきたいです。合唱は、武蔵野音楽大学の声楽専攻の学生から選抜、編成された合唱団で、フレッシュな歌声がホールに響くのが今から楽しみです。
──武満 徹さんの作品も演奏されますが、武満さんとは面識がおありでしたよね。
私の伯母と武満 徹さんが小学校の同級生だったんです。そんなご縁で、高校生の頃に武満さんのお宅にお邪魔したこともあります。また、演奏会や、CDの録音に立ち会っていただいたこともあります。武満さんの曲は現代音楽で難しいと思う方もいらっしゃると思うのですが、映画音楽や、親しみやすいソングもたくさん書いた方です。今回演奏する曲は、軽いソングが合唱向きに編曲されたものなので、気軽にお聴きいただけると思います。
──次の10年、20年に向けてはいかがでしょうか。
モーツァルトのピアノ協奏曲シリーズは、全曲演奏までにあと10数年かかります。初代メンバーはその頃還暦を超えますね(笑)。今後のプログラムも、風のホールの響きに合わせてモーツァルトやベートーヴェンなど古典派中心になるとは思いますが、近現代、バロックなども取り上げていければと思います。モーツァルトの交響曲にも、まだ初期の作品で演奏していないものもあるので、少しずつプログラムに入れていきます。天才の作品には「あ、知らない曲だ」と思っても、聴いて損するものは絶対にないので、ぜひ、風のホールにお越しください。お待ちしております。