城山羊の会『水仙の花 narcissus』
本年4月、第59回岸田國士戯曲賞を受賞。
その舞台に、今、最も注目が集まる山内ケンジの最新作!
人間関係を鋭く、そして軽妙に描き切る、大人の会話劇が、ここにあります。
本公演は終了しました
2015年12月4日(金)〜13日(日) 全13公演
*上演時間 約2時間(途中休憩無し)【全席自由】 | 日時指定・整理番号付 【会員】前売2,800円・当日3,100円 【一般】前売3,200円・当日3,500円 【高校生以下】1,000円(前売・当日とも) |
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早期観劇割引・平日マチネ割引の公演は、会員・一般のみ各500円引き。 中学生以上の方は公演当日に学生証または年齢が確認できるものをご持参ください。 |
![]() 【託】託児サービスあり。 ★早期観劇割引 ☆平日マチネ割引 |
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500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで) *未就学児は入場できません。 *12/5(土)のみ |
【作・演出】 | 山内ケンジ |
【出 演】 | 吹越 満、松本まりか、安藤輪子、島田桃依、 重岡 漠、金子岳憲、岡部たかし、岩谷健司 |
なんだかここ数年、嫌な世の中ですよね。いや、10年前はいい世の中だったっていうこともないんですが。でも特に今年は私の人生の中でも嫌な感じです。ええ、政治の話です。
嫌な政治。嫌な世の中。でも、演劇で政治や世の中を描いても仕方がないので、「嫌な」っていう部分だけを抽出して描きたいです。
とはいえ、嫌なことをいっときでも忘れられるような、いい気分になるお話、みなさんお好きですよねえ。なので今回はそのような対照的なふたつをミックスして、いい気分になって嫌な気分になるお話を作るつもりです。
どうぞご期待くださいませ。
【城山羊の会プロフィール】
山内ケンジの脚本、演出による演劇プロデュース・ユニット。2004年「CMディレクター山内健司の演劇」として故深浦加奈子を主演に迎え、『葡萄と密会』で演劇活動開始。2006年に制作プロデューサー城島和加乃と『城山羊の会』発足。年に2回のペースで定期的に公演を行っている。
HP|http://shiroyaginokai.com/
Twitter|@shiroyaginokai
写真=尾鷲陽介
【山内ケンジプロフィール】
大ベテランのCMディレクターとして、NOVA、クオーク、TBCのナオミ、湯川専務、第一生命新鮮組、にゃんまげ、トヨエツのトライアングル、ソフトバンク白戸家など1万本以上のCMを作ってきたが、2004年に城山羊の会を結成。2014年、『効率の優先』で第58回岸田國士戯曲賞最終候補に。2015年、『トロワグロ』で第59回岸田國士戯曲賞を受賞。また、2011年には『ミツコ感覚』で長編映画監督としてもデビュー。2作目となる『友だちのパパが好き』が本年12月公開予定。
【山内ケンジさんからのメッセージ】
城山羊の会が、ここ最前線演劇の殿堂、三鷹市芸術文化センター星のホールでやらせていただくのもなんと今回で5本目になります。これはすごいことです。私の18本目の作品になるわけですが、ということは全体の3割近くを三鷹でやっていることになります。もはやこれはベースメント、じゃないホームグラウンドと言っていいと思います。
キャストの顔ぶれを見ても、アレ? レギュラーの石橋けいさんがいなかったり、吹越満さんや松本まりかさんが久しぶりに登場だったり、初めての人がいたり、たいへん興味深いですね。新しい風が、ホームグラウンドに吹き荒れることは間違いありません。みなさま、どうぞお楽しみに!(山内ケンジ)
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『城山羊の会』インタビュー |
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最近、世の中が嫌な感じなので、なぜそんなに嫌な感じがするのかを、 抽出して書いてみたいなと思っています。 だから「嫌なものを、お届けします」ではなくて(笑)、 書き出された“嫌な感じ”が、“面白さ”として伝わればと思います。 |
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―山内ケンジ― | ||
【インタビュアー】森元隆樹(三鷹市芸術文化振興財団) |
本年4月、第59回岸田國士戯曲賞を受賞。今、最も注目を集める劇作家である山内ケンジが、作品創りの母体としている『城山羊の会』は、大人が楽しめるクオリティの高い会話劇で、毎回観客を魅了し続けています。
今回、三鷹市芸術文化センターでの5回目の『城山羊の会』公演となる、新作「水仙の花 narcissus」を前に、山内ケンジさん、そしてCASTの吹越満さん、松本まりかさんに、お話を伺いました。
まずは、今回のタイトルを『水仙の花 narcissus』にされた理由を教えて下さい。
山内ケンジ山内 そうですね、まずはとにかく「ナルシスト」の語源でもありますしね、そういう人が出てくると。自分本位で、なんだかんだ言って自分のことしか考えてない人たちが、たくさん出てくる舞台だと思います(笑)。
その構想が浮かんだ、きっかけのようなものはあったのでしょうか?
山内 いや、特別なにかあったとか、そういう人に遭遇したということは無くて、キャスティングが決まっていく中で、全体のバランスを考えていたら、自然とナルシスティックな人が出てくる芝居が浮かんできて、タイトルが決まったという感じですね。
ストーリー的には、どんな展開になりそうですか?
山内 以前、作品を書く前にストーリーを公表したら、書き進めるうちに全然違う話になってしまって、怒られたことがあったので(笑)、あんまり先に言いたくないんだけど(笑)。まあMの人がSに目覚めてしまって、その罪悪感にさいな苛まれるんだけど、知らず知らずのうちにその罪悪感が消えて、快感になっていく………というストーリーだと思います(笑)
吹越さんは、城山羊の会には『微笑の壁』(2010年10月、下北沢ザ・スズナリ)以来のご出演となりますが、山内さんの岸田戯曲賞受賞式後のパーティー(2015年4月)で、「山内さんの作品の中で一番面白いのは『微笑の壁』。今回の受賞作は、その次くらい」と大きな声で仰って、会場が大爆笑だったのを覚えています。
吹越 満吹越 ん……(笑)。ちょっと酒も入ってたんで……(笑)。
「受賞作よりも先に『微笑の壁』で岸田戯曲賞を取るはずだった」とも仰ってました。
吹越 言ってましたね……(笑)。でも、まんざら冗談でもなくて、当時は本当に「この舞台に出れてよかった」と思っていたし、その手応えが嬉しかったんですよね。
『微笑の壁』私も拝見しましたが、物凄く面白かったです。
吹越 やっぱりそうでしょう(笑)。
特に、吹越さん演じる広告代理店の男が“本妻がいるにも関わらず、違う女性と結婚披露パーティーを開こうとしていて、そこに本妻が乗り込んできて、女同士の大喧嘩になる“というシーンにおいて、「激しく言い争っている女性2人の間に座ったまま、男は、微動だにしない」という役を見事に演じられた、吹越さんの“無を貫いた”顔が大好きでした。
吹越 実は僕は、舞台でも映画でもテレビでも、演出家やプロデューサーに、自分から「出たい」と言ったことが一度も無かったんです。そんな中、唯一、初めて「出たい」と言ったのが、山内さんの舞台だったんですよ。
それはすごいですね。
吹越 山内さんの舞台は、第一回公演の『葡萄と密会』(2004年7月〜8月/新宿パンプルムス)から観ていて、それはそれは面白くて、だから昔からの知り合いで、城山羊の会の常連である岩谷(健司)君や岡部(たかし)君には「山内さんは絶対そのうち、岸田戯曲賞を取るぞ。でも、賞を取ってから初めて仕事をするのは嫌だし、取る前に出演したいから、山内さんに『出たい』って言っていいかな」って、ずっと言ってたんです。だから、満を持して出演できて、しかも評判が良かったので、『微笑の壁』は、僕にとってとても印象深い作品なんですよ。残念ながら岸田戯曲賞は取らなかったけど(笑)。
山内 吹越さんはね、僕の舞台によく出てくれる岩谷君や岡部君と、いつもつるんでるなあという感じがあって、というか、岩谷君はワハハ本舗の頃から吹越さんと一緒で、(吹越さんが)ソロで活躍し始めた頃はブレーンでしたし、だからまあ吹越さんは、いつも自分の傍にいる感じがしていたので、そろそろ出演してもらおうかなあと(笑)。『微笑の壁』に関しては、いつも通り僕の台本が遅くて、途中で筆が止まってしまって、なかなか稽古場に行けなくなっちゃったんですね。でも、吹越さんを中心に、僕が居なくてもどんどん固めてくれて、ようやく稽古場に顔を出せた日に、台本が出来ていたシーンまでを演ってもらったらすごく面白くて、ありがたかったですね。
吹越 いや、稽古場をまとめていたのは僕じゃなくて、やはり、岩谷君や岡部君でしたよ。ちなみに、先ほど山内さんが仰った日のことはよく覚えています。芝居の冒頭が東加奈子さんと僕の2人だけのシーンだったので、ずっと2人で稽古しててね、やがて山内さんがいらっしゃって「じゃあ、冒頭のシーンやってみてください」と言われた時に、他の役者さんたちも初めてみんな揃ってて、その視線に物凄く緊張したんですよ。今まで、あのクオリティで上演し続けてきた「城山羊の会」の舞台にね、自分がすんなり入れるのかどうか試されてる気がしてね、とにかくあんなに緊張したことは無かったですね。
山内 ワハハ本舗の頃の吹越さんは観てないんですけど、フリーになってからは舞台でも映像でもよく観てました。でも、(お笑い劇団出身という)普通の役者さんとは違う経緯で出てきた人だから、自分の舞台に嵌るのかどうかは、ほんとのところ、やってみるまで判らなかった。
吹越 僕はその時まで、作品の種類として、山内さんの作品のようなトーンの舞台をやったことが無かったんですね。
山内 例えば、吹越さんが主演した『エレファント・バニッシュ』(2003年5月〜6月/世田谷パブリックシアター)も観ましたけど、普通の日本人の生活感の無い人だなと。普段の生活が想像つかないなと。だから、当時は存在自体がシュールに感じていたので、『微笑の壁』の「奥さんがいるのに、別の女性との結婚パーティを開こうとしている」男の役が自然にできる人なんだろうなと思って書き始めましたが、実際にリアルな芝居が出来るのかどうかの手応えは、稽古に入ってみるまで判らなかったですね。今はだいぶ判りますよ。『微笑の壁』もやったし、映画(12月公開予定「友だちのパパが好き」)もやったし(笑)。
吹越 『微笑の壁』で一番印象に残っているセリフは、自分のせいで女性2人が揉めている時に、奥さんに向かって「なにも考えて無かった……。自分でもよくわからないんだ……。」って言うセリフでしたね。凄いですよね(笑)。
山内 でも思うんだけど、吹越さん自身『微笑の壁』に出演する前と後では、演技の質がだいぶ変わったんじゃないかな。
吹越 そうですね。20年来の付き合いの岩谷君に「吹越さんが、ああいう演技をするとは思わなかった」と言われたのを覚えています。今まで気付いてなかった演技が、自然に自分の中から出てきたという感じでしたね。なかなかそういうのは、別の現場では感じたことが無かったですからね。山内さんの演出に、意外に素直に溶け込めたという点も含め、自分にとって『微笑の壁』に出演できたことは大きかったですね。
松本さんは『効率の優先』(2013年6月/東京芸術劇場)で初めて、城山羊の会の舞台に立たれました。
松本まりか松本 城山羊の会を初めて観たのは『スキラギノエリの小さな事件』(2012年6月/下北沢楽園)でした。知人の方から「面白いから観たほうがいいよ」と言われていたのですが、仕事のスケジュールと重なっていて無理だなあと思っていたら、ある日偶然、ほんとに偶然時間が空いたので、駆け込むように観に行ったら、当日券の最後の1枚で(笑)。で、観るなり、その面白さに圧倒されてしまって。とにかくこの空気感の中に自分も入りたいと。丁度、演じるということに迷いを感じていた時期だったこともあり、もしも城山羊の会のような世界に違和感なく存在できたら、自分は芝居を心から面白いと思えるのではないか、そして、お芝居を続けても良いのではないかと思いました。そうしたら、その日客席に配布されていたチラシ束の中に『城山羊の会、出演者オーディション開催』の文字が。「もうこれは受けずにはいられない!」と。そして受けたらラッキーにも受かって、出演が叶ったと。
そのすべてのきっかけが、当日券の最後の1枚だった訳ですね。しかも、城山羊の会が女優を募集したオーディションは、後にも先にも、あの時だけですものね。
松本 そうなんです!だからあの日、城山羊の会を観られなかったら、私はここにはいないし、それどころか、いったいどうなっていたのでしょうという感じで(笑)。本当に人生が変わったほどの観劇だったんです。しかも実は、そのオーディションの日が、当時出演していた舞台の日程と重なってしまっていたので、もう「どうしよう!どうしよう!」と悩んでいたら、有難いことに、マチネ(昼の部)とソワレ(夜の部)の間に、オーディションを受けられる時間があって、劇場とオーディション会場を、タクシーで往復しました。
山内さんは、オーディションの時のことを、何か覚えていらっしゃいますか?
山内 もちろん覚えてます。でもほんとのところ、オーディションの日よりも、『スキラギノエリの小さな事件』の終演後に、劇場(下北沢楽園)の狭い階段で「オーディション受けたいんです!」と、勢いよく言われた時のほうが印象に残ってますね(笑)。
松本 私も、吹越さんと同じで、それまで作家や演出家の方に「出たいです!」なんて言ったことなかったんです。だからあの時はもう「この衝動を止められない!」という感じで(笑)。
そして、念願叶って城山羊の会へのご出演となった訳ですが、いかがでしたか?
松本 最初は、山内さんの台本独特の「あっ」とか「うっ」とかいう“合いの手”のリズムがなかなか掴めなくて、そうすると他のセリフも上手く言えなくなってしまう悪循環に陥ってたんですけど、やがてセリフが自然と体に入って来るようになったらどんどん楽しくなっていって、もう本当に、初めて芝居をやっていて楽しいと思えたくらい、充実した毎日でしたね。
山内 松本さんはね、セリフ覚えが早いんですよ。もうどんどん覚えちゃう。
松本 最初はそんなこと無かったんです。さっきも言ったとおり、なかなか上手く言えなくて、稽古しても稽古しても覚えられなくて。で、ふと気付がつくと、最初の出番の後、私の出番が随分無くて(笑)。「あれ?“あて書き”って聞いてたけど、私への筆が止まってしまったのかしら」と不安になって(笑)。そしたら、再び私の出てくるシーンが書き上がってきて、その頃にはもうリズムもだいぶ掴めていたのと、セリフが素敵過ぎるので楽しくて楽しくて、1回か2回読んだら覚えちゃって、もうスーッと役に入っていける感じで、山内さんのセリフの凄さを感じました。
山内 そうそう思い出した。松本さんはね、すごく質問するんですよ。
吹越 山内さんにですか?
山内 いや、僕だけじゃなくて全員に。周りから「あまり考えずに言えばいいんじゃない?」って言われても、脚本にも演出にも納得するまで質問し続けるんです。だから吹越さんも質問攻めにあうかもしれない(笑)。
吹越 稽古終わって飲み屋に行ったら、稽古のこと忘れて飲みたいのに、そこに台本出して来るような?(笑)
山内 そうそう、まさにそういうタイプ(笑)。
松本 すいません……(笑)。
吹越 でもまあ、それぞれのスタイルがあるからね。それはそれでいいと思いますよ。逆に僕とか、山内さんには畏敬の念があるから、ある意味怖くてなかなか聞けないし、聞かずに判ってるふりして演じてみるけど、これ通用してるのかなあ、バレてるんじゃないかなあと思ったりしますから。稽古場の山内さんの『駄目出し』ってほんとに的確で、その言葉からは確かに役者への愛情を感じるんだけど、自分が勝手に愛情だと思ってるだけなんじゃないかと、怖くなる時もある。とにかく、稽古場で一番面白いのは、山内さんの駄目出しの一言ですから。
松本 私もそう思います。
山内さんは、松本さんとご一緒されてみていかがでしたか?
山内 稽古場で見てたら「あっ、ここまでできるんだ」という、良い意味での驚きが多かったので、「じゃあもっと」と思ってどんどん書いていったら「行くとこまで行けた」という感じでしたね。
松本 嬉しいです。その頃にいただいたセリフは、本当にスーッと体に入ってきましたし、大好きなシーンばかりでしたから。今回も、山内さんのセリフを言えるのが楽しみで仕方ないです。
それでは、今回の公演に向けての、お客様へのメッセージをお願いします。
吹越 城山羊の会の舞台には、毎回毎回、違う試みがあって、予想したものにならないというか、予想を超えてくるんですよね。だから今回、この座組でどんな舞台が出来上がるのかが単純に楽しみだし、いい意味で、お客さんにもその「想像していたのと違う」ことを、楽しんでいただきたいなと思います。
松本 今日、山内さんと吹越さんの話を聞いて、改めて、面白いものが出来上がる予感をヒシヒシと感じていますし、山内さんの作品に関われることが、ただただ幸せです。意気込んではいますがリラックスして、お客様に楽しんでもらえるよう、自分も楽しんでやります。
山内 何年か振りで“石橋けい”ちゃんが出演しないし、初めての人もいるし、ここ何作品かとはまた違う感じになると思いますね。まあタイトルを決めるのも早かったし、筆が進むような予感がしています(笑)。
最近、世の中が嫌な感じなので、なぜそんなに嫌な感じがするのかということを、抽出して書いてみたいなと思っています。だから「嫌なものを、お届けします」ではなくて(笑)、書き出された嫌な感じが、面白さとして伝わればと思います。