優雅に、しなやかに 至高のデュオで聴くフランスの室内楽
樫本大進(ヴァイオリン)
©Daisuke Akita
エリック・ル・サージュ(ピアノ)
©Jean-Baptiste Millot
[完売御礼]
本公演は終了しました
2015年 1月18日(日) 15:00開演
【全席指定】 | 会員 S席4,500円・A席3,600円 一般 S席5,000円・A席4,000円 *U-23席(23歳以下)2,500円 |
* | 中学生以上の方は公演当日に学生証または年齢が確認できるものをご持参ください。 |
500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで) *未就学児は入場できません。 |
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【出 演】 | 樫本大進(ヴァイオリン) エリック・ル・サージュ(ピアノ) |
【曲 目】 | フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調op.13 プーランク:ヴァイオリン・ソナタ フォーレ:ロマンス 変ロ長調op.28 フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調 |
今年度の風のホールでは、2014年に没後90年、翌15年に生誕170年を迎えるフォーレの作品を中心に、フランスの音楽をご紹介しています。
今回は、19世紀から20世紀に活躍したフランスの作曲家、フランク、フォーレ、プーランクそれぞれのヴァイオリン・ソナタを中心としたオール・フレンチ・プログラム。ベルリン・フィル第1コンサートマスターの樫本大進と、レ・ヴァン・フランセのメンバーでもあり、クラリネットのポール・メイエのリサイタルで三鷹でもお馴染みのピアニスト、エリック・ル・サージュのデュオでお聴きいただきます。樫本大進は、風のホール初登場です。
プログラムはフォーレの生前から頻繁に演奏される機会に恵まれたヴァイオリン・ソナタ第1番と、その初演直後に作曲された「ロマンス」。ベルギーに生まれ、フランスで活躍したオルガニスト・作曲家のセザール・フランクの代表作であるヴァイオリン・ソナタ。そして、生粋のパリジャン、プーランクが友人のスペインの詩人・劇作家、フェデリコ・ガルシア・ロルカに捧げたヴァイオリン・ソナタから成ります。
ル・サージュはシューマンのピアノ作品および室内楽作品の全曲録音を完成させた直後から、フォーレの室内楽全集の録音に取り組みました。樫本大進はそのうち2作の録音に参加しています。何度も共演を重ねている二人だからこそ味わえる丁々発止のやり取りが期待されます。
豊かで柔らかく広がるル・サージュのピアノと艶やかで伸びやかな樫本のヴァイオリン。名手二人による心の琴線に触れる繊細な情感表現で味わう珠玉のリサイタルを、どうぞお聴き逃しなく。
──エリック・ル・サージュさんとの出会いについてお話しいただけますか?
樫本大進(以下KD):エリックに会ったのは僕が20歳の頃。エリックとエマニュエル(・パユ)、ポール(・メイエ)が毎夏行っている“サロン・ド・プロヴァンス室内音楽祭”に呼んでもらった時です。地元のボランティアの人たちとみんなで一緒に作り上げている音楽祭で、とても楽しかったのを覚えています。それからほぼ毎年招いてもらって、日本でも同じようなことを出来たら…と思い始めたことが僕の「“ル・ポン”赤穂・姫路国際音楽祭」につながっています。初めてエリックに会った時の第一印象は「背が高い人だな〜」(笑)。彼はいつも穏やかで信頼できる人。最初に一緒に演奏したのはブラームスのホルン・トリオだったと記憶しています。トリオのピアノというのは、えてしてそういう立場になるのかもしれないけれど、いつもバランスに気を配り、そしてその中で遊ぶ。音楽を全体的にとらえていて、凄いなと思いました。
そうそう! エリックは日本が大好きで、餃子を200個食べたことがある! と自慢していました。僕も食べることは好きだけど、さすがに200個はできないなぁ(笑)。
──今回共演する“フレンチ・プログラム” ですが…
KD:バッハ、ベートーヴェン…と集中的に取り組んできたので、今度はまったく違ったものを弾きたいと思いました。今回の“フレンチ・プロ”の1曲・1曲は、それぞれ単独でリサイタル・プログラムに入れたこともありますが、こうしてまとめて演奏すると全然違ったおもしろさが出てきますよね。今回の企画は、こういうプログラムだったら絶対エリックと演奏したい! と長年あたため続けてきて実現したものです。
エリックとは、ヨーロッパでは何回も共演しているのですが、日本では初めてのツアー。楽しみですね!
──フォーレの作品についてもお話しいただけますか?
KD:エリックは、フォーレの室内楽作品を全て録音したスペシャリストです。彼と共演すると音楽がまったく違う雰囲気になりますね。エスプリと言えば良いのでしょうか、空気が変わるという感覚です。ソナタでもロマンスでも、カラフルな音の色を感じていただけると思います。
──プーランクのソナタはあまり聞いたことがないのですが。
KD:実はこの曲こそ、エリックと弾きたかった曲なのです。ジネット・ヌヴーのヴァイオリン、プーランクのピアノで初演された作品ですが、本当にドラマティックな曲。ぜひ皆さんに聴いて頂きたい1曲です。
──そして、フランクのソナタも楽しみです。
KD:“フレンチ・プログラム”の締めくくりは、この曲ですね。ヴァイオリンの作品の中でも人気がある作品のひとつなので、よく演奏される曲ではありますが、エリックと僕、そして会場にいらしてくださったお客さまとで作られる、その時だけの音楽を一緒に楽しみながら聴いて頂ければとても嬉しいです。
──初めて樫本大進さんと会ったときの印象はいかがでしたか。
ル・サージュ(以下LS):大進はとても若かったですね、20歳でした。この音楽祭には世界各地からさまざまな奏者が参加しますが、大進は初参加のときから輝いていました。才能豊かで性格もすばらしく、すぐに私たちと打ち解けました。以来、毎年のように参加してくれ、そのつど一気に階段を駆け上がっていくような成長と進化を見せてくれます。
──ベルリン・フィルのコンサートマスターに就任してからどんな変化が見られますか。
LS:信じがたいほどの輝きを感じます。性格は昔とまったく変らず、明るく元気なナイスガイですが、落ち着きと責任感と頼りがいのある面が増したように思われます。
──オーケストラで演奏していると他の楽器の音に耳を開き、その音を注意深く聴く耳が育つといいますが、この点ではいかがですか。
LS:その点はすでに若いころから出来上がっていたと思います。もちろんベルリン・フィルで日々培われることは多いでしょうが、これまでの面によりプラスされたということではないでしょうか。いまや、本当に彼の演奏は信じがたいレヴェルに達しているのです。
──今回のデュオ・リサイタルでは、フランス作品が選ばれていますが、この選曲はふたりの要望によるものですか。
LS:そうです。実は、2年前に大進とフォーレの「ヴァイオリンとピアノのための作品全集」をレコーディングし、今回の日本公演ではそのなかからヴァイオリン・ソナタ第1番を演奏します。つい先ごろ、イスタンブールでも共演し、そのときはヴァイオリン・ソナタ第2番で共演しました。
──録音のときの様子はいかがでしたか。
LS:可能な限りリハーサルの時間を取り、綿密な練習を繰り返しました。私はこのCDの完成により、フォーレに関しては室内楽作品のすべてを録音したことになります。大進との録音は集中力と緊張感が伴うものでしたが、とても楽しい時間を過ごすことができました。彼と一緒に演奏すると、いつもとても楽しいんです。大進はソリストとして偉大なのですが、こういう人は室内楽でもすばらしい力を発揮する。それに性格がすごくいい、これに尽きますね(笑)。
──ル・サージュさんは、演奏会や録音のプログラムを決めるとき、もっとも留意するのはどういう点ですか。
LS:プログラムに対する考えは非常にシンプルです。いま一番演奏したい作品ばかりで構成するからです。私はこれを食事のフルコースにたとえています。まず、アントレ(オードブル)が必要ですよね。今回の大進とのデュオでは、いま話に出たフォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番がそれに当たります。ひとつめのメインにはプーランクのヴァイオリン・ソナタを選びました。休憩をはさみ、2皿目のメインの登場です。フォーレのロマンスですね。作品の重さや大きさは関係なく、ふたりの思いが込められたという意味です。デザートはフランクのヴァイオリン・ソナタ。これがデザート? と、驚かれるかも知れませんが、たっぷりとおなかがいっぱいになるスイーツもいいのでは(笑)。私たちは、おいしい食事をたくさん味わっていただきたいし、満足感を得てほしいと思っていますから。そして何より、私たちはフランス作品が内包する豊かな色彩感、ユーモアやウイット、エスプリなどを表現したいと思っています。
──フランス料理のフルコース、楽しみです。
*エリック・ル・サージュさんのインタビューは、伊熊よし子さん(音楽ジャーナリスト)によって行われました。