派遣のピエロとして働く青年・太郎は、ある日、自分の稚拙な芸を喜んでくれる老女・マチコと出会う。
マチコは、高齢者施設を抜け出してきたのだった。
そんなマチコをかくまうかのように、自宅に住まわせる太郎。
ひょんなことから始まった二人の共同生活は、周囲の人々を、戸惑いと苦悩に陥れていく......
老いとは、幸福とは、家族とは、人生とは。
すべての世代にぜひ観てもらいたい、素晴らしい舞台の登場です。
本公演は終了しました
2013年 6月7日(金)〜16日(日) 全13公演
【全席自由】 (日時指定) |
[会員] 前売2,700円・当日3,000円 [一般] 前売3,000円・当日3,300円 学生1,500円(前売・当日とも) 高校生以下1,000円(前売・当日とも) 【☆早期観劇割引 ★平日マチネ割引】すべて300円引き |
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500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで) *6/8(土)のみ *未就学児は入場できません。 |
【作・演出】 | ノゾエ征爾 |
【出 演】 | 井内ミワク、町田水城、鈴真紀史、滝 寛式、 竹口龍茶、踊り子あり、川上友里、鳥島 明、 山口航太、ノゾエ征爾(以上、はえぎわ) たにぐちいくこ、新名基浩、金珠代、 笠木 泉、柴 幸男(ままごと) |
【作・演出のノゾエさんからのメッセージ】
2010年の初演。2012年に広島の方々とのリメイク再演。そして今回、再々演になります。はえぎわ過去25作品のうち、再演は一度しかないうちとしてはかなり異例の作品です。そして、再演を重ねることによって、「進化してんのかしてないのか」。サブタイトルが何かを物語っているかのように感じます。たび重なる冒険に耐えうる、なかなかのタフな作品です。三鷹ではどんな発見があるのか、ないのか。「チョークとチョークを描く壁さえあればできる演劇」が発明(?)された作品です。小道具では埋められなかった何かを、ふと浮かんだチョークによって満たしていくことができました。まっさらな空間に、線が一本また一本と書き加えられる毎に空気がまたジワッと動き出すそのちょっとした興奮が忘れられません。滅多に味わえないこの空気感を、是非是非体感していただけたらと、心より。本当に心より。お待ち申し上げます。
【はえぎわ & ノゾエ征爾 プロフィール】
1999年、始動。2001年に劇団化。全作品で作・演出を手がけるノゾエは、独自の‘嘆きの喜劇’で、完璧ではない世の中で懸命に生きる人々をユーモアいっぱいにつづる。2012年には『◯◯トアル風景』が第56回岸田國士戯曲賞授賞。
劇団WEB http://www.haegiwa.net/ 劇団ツイッター @haegiwada
【はえぎわ『ガラパコスパコス』インタビュー動画】
※JCN武蔵野三鷹「MITAKA ARTS NEWS ON TV vol.98」で放映されたものです。YouTube で見る
【初演時の『ガラパコスパコス』の上演台本より抜粋】
≪登場人物≫
太郎:派遣のピエロとして働く青年。高齢者施設を抜け出してしまい、街を徘徊していた
老女マチコ(まっちゃん)とふとしたきっかけで知り合い、かくまうかのように、
一緒に暮らし始めている。
晴郎:太郎の兄
静香:晴郎の嫁
━太郎の暮らすアパートに、兄夫婦がやってきて━
晴郎 たとえばな、俺らの母親がさ、ボケちゃって色々と分からない状態になっててさ、
何も分からずに他の人の家で暮らしてたらどう思う?
太郎 それが幸せならそっちの方がいいじゃん
晴郎 えーマジで?俺いやだよ、母さんが他の人と暮してたら
太郎 でも記憶なかったらしょうがないよ
静香 しょうがないで割り切れることじゃないんだよ?
太郎 何が悲しいって、ちゃんとしてた頃とのギャップで悲しいんでしょ?
俺にとってまっちゃんは、最初からこれがまっちゃんだもん。
静香 そういう事じゃないよ…それ全然違うよ…人ってそんな簡単なものじゃないじゃない…
晴郎 ういうい(静香を静止する)…。
太郎…シンプルシンプルに聞くけど、シャーリー・テンプルに聞くけど…(ドアを閉める)
シャーリー・テンプル風にシンプルシンプルに聞くけど、太郎、これが犯罪だってのは分かってる?
太郎 ……
晴郎 このまま行くと、太郎が捕まっちゃうことになるのね。
それは、親父も母さんも、さすがに、とてもとても悲しむ。と思うのね。
静香 それもそうだし、お婆さんのご家族が、すごい悲しんで探してるの。
分かるよね?お母さんいなくなったら悲しいでしょ?
晴郎は静香を連れて外に出る
晴郎 あまり追い詰めるようなこと言うなよ…!
静香 普通の事言っただけじゃん
晴郎 ダメだよそういうのお!
静香 じゃあ何言うのよ
晴郎 あんまり言ったらダメなんだよ
静香 なにそれ。じゃあ何言うのよ。自分達が今まで何も言って来なかったらこうなったんでしょ?
晴郎 言ってるよ
静香 言ってないじゃん。いっつもあいつは繊細だからってさ
晴郎 大人なんだから言わないでも分かるっつってんの
静香 大人じゃないじゃん。大人のすることじゃないでしょ?
晴郎 うるさい、うるさいよ
静香 なにようるさいって
晴郎 うるせぇ、ちび。
静香 は?
晴郎 あいつのことは俺が一番分かってんの。二人兄弟だぞ
静香 絶対分かってないよ
晴郎 「北風と太陽」だよ。太郎には北風で行くしかないんだよ。
静香 …
晴郎 あ違う、太陽、太陽でいくしかないんだよ。俺が太陽方式でちゃんと導くから。
静香 自分の事ばっかじゃん
晴郎 何がだよ
静香 なに、親父と母さんもさすがに悲しむって。お婆さんの家族の方が悲しんでるでしょ?現に今も。
Interview ガラパコスパコスインタビュー
6月に星のホールで公演される「ガラパコスパコス」にご出演の、ノゾエ征爾さん(作・演出・主宰)、劇団員の井内ミワクさん、町田水城さん、そして今回ゲストで出演される柴幸男さん(劇団ままごと)にお話を伺いました。
高齢者施設で芝居をした時に、利用者の方々の笑顔に涙が止まらなくなり、「老い」について考え始めたのが、この舞台の原点です。
──今回、この作品は再演となりますが、初演時(2010年12月こまばアゴラ劇場)に、この舞台を作ろうと思われたきっかけを教えてください。
ノゾエ征爾さんノゾエ その年の春に、世田谷区の財団から、世田谷区内の高齢者施設を十数箇所廻って、ご利用者さんに演劇やパフォーマンスを見せてほしいという依頼がありまして。その時、今までは曲がりなりにも“お客様は劇場に来て下さるのが普通”といいますか、少なくとも「今日は、劇場に演劇を観に来ました」という想いを持った人たちの前で公演をしていた自分にとって「待ちわびている人が誰もいない中で芝居をやる」ということが、初めての体験だったんです。ご利用者さんにとっては、毎日、ある時間になると始まる“いつもの”レクリエーションの時間で、それが時には音楽であったり、ボウリング大会であったり、なので「はい、今日は演劇ですよ」と言われて、座らされているだけだという。中には認知症の方も多く、感情も反応もとても薄い様子を目の当たりにしました。「ああ、ここでどこまで演劇が届くのだろうか?」と懸念しながらも、一生懸命務めていたら、やがて少しずつですけど、自分が思ってもみないところで“届き始めている実感”を感じるようになってきて、ご利用者の皆さんの表情がみるみる変わっていって、それまでほんと無表情だった方が泣いたり笑ったり、こちらが歌を唄うと、知っている歌だと一緒に唄ってくださったりして。もう職員の方もびっくりされて、普段だと公演を実施した資料として出演者の写真を撮るだけらしいのですが「あのおじいちゃんが笑ってる。あのおばあちゃんのこんな表情見たことがない。ぜひご家族に写真をお見せしたい」と、ご利用者さんの写真ばかり撮られ始めて。
それを目の当たりにして、僕自身初めて、舞台上で涙が出て止まらなかったんですね。
そこから、「老い」というものをこれまでとは違う感触で感じるようになり、芝居の中で「老い」を探っていきたいと思ったのが、この芝居の原点です。
──なるほど。その想いが「ガラパコスパコス」に繋がっていく訳ですね。初演もご出演されている、劇団員の井内さんと町田さんは、この作品が立ち上がっていく頃のことで、覚えていらっしゃることはありますか?
町田水城さん町田 とにかく「変なことをしようとしているなあ」というのはありましたね。稽古始めの頃「今回の舞台は体を使いたい」とか言って「凄く動いて疲れ果ててから見えてくるものを探りたい」とやたら動かさされたり、「体に負荷を掛けた状態で芝居が進められないか」とか言って、役者は横一列に並べられて、ずっと“かなり天井が低い”という設定で、体をかがめて芝居をさせられたり。
井内 ああ、やってたやってた。
町田 だから、どんな風に完成していくのかはなかなかわからなかったんですけど、それまでやったことのない稽古が多かったので、なんか面白そうだぞ、なんか新しいものが生まれそうだぞってのは感じてましたね。
ノゾエ 僕自身、最近ずっとそうなんですけど、どこからどうなって立ち上がっていったか、もちろんその根本にあるものは判っているんですけど、その想いが最終的に形になっていく過程や道筋などは、ほんとによく判らないし、今考えても思い出せないくらいなんですよ。だから、役者の人はもっと判らないかもしれませんね。
井内 稽古場ではただただ懸命に稽古していて、やがて劇場に入って、何度か通してやってみるうちに「ああ、こういうことだったのか」と少しずつわかるって感じでしたね(笑)
町田 ただ、その最終段階に行くまでは、ちょっと大変だったよね。ある程度作ったところで一度振り出しに戻って練り直し始めたんだけど、そこからなかなか前に進まなかった。
ノゾエ 確かに、そういう時間が長かったですね。描きたいことははっきりしているんだけど、それがどう昇華していくのか、本当に悩みました。
町田 で、劇場入りの10日前くらいかな。チョークの登場だよね。
ノゾエ 前日に、ふっと閃いたんですよね。
町田 「ああ、今日も先の見えない稽古するのかなあ」なんて思いながら稽古場に行ったら(笑)いきなり「(※)小道具や、表現したい言葉などを、すべてチョークで壁に書くことで表してみようと思います」って。「おっ、これは面白くなりそうだぞ」と思いましたね。
井内 「あっ、今回小道具いらないんだ。ラッキー」って思いましたね(笑)
ノゾエ 舞台セットも、チョークで書くことのできる壁だけあればいいんだなって。もともと、チョークで書いて何かを表現するというのは、いつかはやってみようと暖めてはいたんです。でもそれは、芝居の中の1シーンとして、どこかで効果的にやれたらいいなくらいの感じで創作ノートの片隅に書いていた程度のことだったので、まさか全編に渡って壁にチョークで書いて舞台を成立させるという芝居を思いつくとは思ってもいませんでしたね。
──そんな「ガラパコスパコス」ですが、幕が開けたら好評で、追加公演も実施されるほどの公演となりました。人生とは、老いとは、家族の繋がりとはという一見重くなりそうなテーマを、ノゾエさん独特のユーモアで包み込んでいて、小道具などをすべてチョークで壁に書いていく舞台演出も斬新且つ効果的で、見事なエンターテインメントに仕上がっていました。
ノゾエ でも、稽古場で最後にゲネ(全編を通して演じてみる稽古)をやった時に「これはやばいかも」って凄く落ち込んだんですよ。「えらいもの作っちゃったなあ」って(笑)もちろん、自分としてはその時の思いをすべて込めた作品に仕上げた確信はあったのですが、果たしてこれは、お客様に受け入れてもらえるのだろうかと。もうほんとに落ち込みが激しくて、だから幕が上がるまでは、本当に自信が無かったです。
──そうなんですか。実は余談といってはなんなんですが、今回ゲストで出演していただく柴幸男さんに三鷹で公演していただいて評判となった「わが星」の初演の時に、ゲネを終えた後、柴さんが凄く落ち込んでいらっしゃったのを思い出しました(笑)
柴 そうなんですよ、もうほんと「えらいもの作っちゃったなあ」って(一同爆笑)「これはまずい。やっちまった」って(笑)
──でも、評判は良かったですものね(笑)
柴 だから、わかんないもんなんですよね(笑)
──その「わが星」のゲネなんですけど、私は凄く面白かったんですよ。
ノゾエ 森元さんから、直接柴さんに「面白かったですよ」という言葉はあったんですか?
柴 ありました。あったんですけど、普段、どちらかというと「あそこのシーンは、もうちょっと修正したほうがいいと思いますよ」とか「あそこのシーン、ちょっとセリフが聞き取りにくかったですよ」とか、割と駄目出しの言葉のほうが多い森元さんが、なんかもうやたら褒めてくださるんで「これは相当駄目だったんだな」と「さすがにやばすぎて、褒めることで少しでも良くなってくれればと思ってるんだな。作戦を変えたんだな」と(笑)
──いえいえ、私は本当に面白かったからそう言っただけで(笑)でも柴さんは、物凄く落ち込んでらっしゃるから「これで駄目だと仰るんだったら、ここから本番に向けて更に良くなっていったら、どれだけいい作品になるんだろう」と、逆に成功を確信して、ワクワクしていたんですけどね(笑)
ノゾエ 僕自身、毎回“産みの苦しみ”を味わっているので、柴さんも同じと聞いて、ちょっと嬉しいです(笑)
──さて、その上で、今回は再演となります。この作品を再演しようと思われた理由を教えてください。
ノゾエ 僕はこれまで「再演」にあまりいい印象が無くて、劇団としては昔一度だけ他の作品を再演したことがあるのですが、その時なかなか自分の中に湧き上がってくるものが出てこなくて「もしかしたら僕の作品は、気質的にも、再演には向かないのかな」なんて思ったりしていたのですが、偶然、昨年広島で(広島の役者さんを中心に、ワークショップを経て)この「ガラパコスパコス」を再演させていただいた時に、自分としては「もうこの作品でやれることはやり切った」と思っていたのに、意外にも結構いろいろなものが新たに見つかっていったことに驚いて「この作品はまだまだ生きているな。新しい役者とともに、そして時間とともに前に進んだな。もしかしたら、まだまだこの先があるな」と思ったんですね。だから自分の作品の中では初めて「この舞台は、再演を重ねていける作品かもしれないな。年月を重ねる中で何度か向かい合っていきたい作品だな」と思えたことが、今回再演を決めた一番の要因ですね。その上で、劇団員もそれぞれ経験を積み、年齢も上がって「老い」との距離も変わり、そして社会的にも震災などを経る中で、生きることと、老いて死ぬことの意味をもう一度見つめて、今こそ劇団として、そして柴さんなどの力も借りて、この作品をやりたいなと思いました。
──再演にあたって、脚本はかなり変えられる予定ですか?
ノゾエ 作っていくうちに自ずと変わっていく部分はあると思いますが、今のところ「大きく変えよう」という思いは持っていません。まあ本当に、脚本も演出も舞台セットも、作っているうちに新しく見えてくるものがあれば、必然的に変わっていくということだと思います。
──劇団として再演が珍しいとのことでしたが、ガラパコスパコスの再演を聞いた時、劇団員の井内さんと町田さんはどう思われましたか?
井内 (すごくゆっくりと間(ま)を取りながら、言葉を噛みしめるように)………ああ、再演するんだなと………嬉しいなと………
ノゾエ もう役作りに入ってない?(笑)
町田 確かに今、おばあちゃんっぽかったよね(笑)
──井内さんは今回も『高齢者施設から抜け出した認知症のおばあちゃん』役ですか?
ノゾエ そうです。
井内ミワクさん井内 前回、自分自身では、おばあちゃんであることはあまり意識せず、ごく普通に認知症を患った一人の女性として演じていたので、果たしてお客さんにはどう見えているんだろうなあと思いながら、毎日の舞台を務めていたのを覚えています。
──町田さんは『派遣会社の性格の悪い上司』役でしたが。
ノゾエ 町田さんも同じ役ですね。
町田 はえぎわの作品の中では割とわかりやすい作品で、観終わった後いい気持ちになれる作品だと思うので「あっ、あれをやるんだな」と思いましたね。そして、小道具が無いので楽だなと(笑)
井内 それが一番嬉しいですね(笑)
町田 あと、この芝居は一度舞台に登場するとずっと出っ放しで、誰も引っ込まないんですね。だから全員が最後まで同じ空間にいるので、気持ち的に楽というか、一体感がありますね。仮に自分が失敗しても、次のシーンの人に「頼んだぞ」という感じで(笑)
ノゾエ 舞台上で、全員が同じ空気を共有できている芝居だったというのは、初演が成功した大きな要因だった気がしますね。
──その上で今回、主役としてご出演いただくのは、ノゾエさんのたっての希望で、劇団ままごとの柴幸男さんです。柴さん、出演依頼があった時のお気持ちを教えてください。
柴 幸男さん柴 最初はからかわれてるんだと思いました(笑)。冗談かなと、どうお返事すればいいのかなと。ただ、他の演出家の方から出演依頼をいただけるというのは、単純に嬉しかったのは確かです。けれども、今後も役者をやっていきたいと思っているわけではないので、さてどうしようかと。
──ノゾエさんの中で、今回の主役をぜひ柴さんにと思われた理由は?
ノゾエ 実際、柴さんが役者をやっている姿を見た訳ではなく、一度だけ劇場でアフタートーク(終演後に、ゲストと作家などが舞台上で対談する企画)で喋っているのを聞いただけだったんですが。
で、初演時に主役を演じてくれた役者さんは本当に素晴らしくて、彼をモデルにこの役が出来上がったくらい最高だったんですけど、また新たな(主役の)太郎像を見つけたいと、思い切って変えようと思いまして。それで、「誰にしようかなあ」と 思い悩んでいた時に、ふと柴さんの名前が浮かんで。 そしたら、それまでのモヤモヤが一気に吹っ切れて快晴になったんですね。そして「柴さんがいいな」と思いついたら、もう他の人で舞台化している情景がまったく浮かばなくなってしまって。
柴 ありがとうございます。でも最初は、スケジュール的に無理そうだったんで、一応お断りしたんですよね。
ノゾエ もう“ずんっ”と一回、激しくテンションが落ちましたね(笑)「ガラパゴスパコスの再演、やめようかなあ」って思ったくらい(笑)
──それは困ります(笑)
柴 ただ、お断りはするんだけれども、お会いしたこともない自分に出演依頼をくださったのは本当に不思議で、やっぱりちょっと嬉しかったので、依頼をしてくださった理由を直接聞いてみたかったのと、ノゾエさんという方にも興味があったので「お断りするのに申し訳ないのですが、もしもよかったら一度お会いしてお話できませんか」とご提案したんです。
ノゾエ それはぜひということで、なんとか日程を合わせてお会いしました。
柴 そうしたら、そのお会いする日までの間に、少しずつ自分の中で心境の変化が生まれて、スケジュール的に難しそうなのは変わらなかったのですが、お会いする頃には「フィフティフィフティ」くらいの感じで、とにかくノゾエさんのお話しを聞いてから決めようと思っていましたね。
──そして、お会いして出演を決められたということですね。
柴 ただの個人的な興味で「普段どんな風に演出をされているんですか?」とか聞いたりしたんですけど、演出方法がかなり自分と違っていたので、それは面白そうだなと。あと、どうやらからかわれているのではないなと(笑)いえもちろん冗談ですが(笑)だから、スケジュール面がクリアになるようなら、ノゾエさんのもとで役者をやってみようかと思い、お引き受けした次第です。
ノゾエ ありがとうございます。
──劇団員の皆さんは、柴さんが主役で出演されると聞いて、どのような感想をお持ちになりましたか?
井内 残念ながら柴さんの舞台は観たことないんですけど、名前はもちろん存じ上げていましたので、ご一緒できるのがとても楽しみです。
町田 長年一緒にやってきて、ノゾエ君が「いける」って言う時は、いつも結構面白いことになるってのが流れとしてありますし、何よりもさっき、柴さんがこの会場に入って来た時の雰囲気で「あっ、なるほどな」と思いましたね(一同爆笑)合点がいきました(笑)
ノゾエ でしょ(笑)“すっ”と来たよね(笑)
町田 来ましたね(笑)
ノゾエ でもかといって、柴さんにご出演いただくことで、何をどうしてどうなってというものが明確にあるという訳では、もちろんないんです。ただ、常に演劇的に新しいことにチャレンジしていこうとされている精神とか、ゲネで一度落ち込んだりとか(笑)、まあ根っこの部分では似ているのかなと思うことも多いので、今はとにかく楽しみで仕方ないですね。
柴 毎日演劇の現場にいられるのに、脚本のことも演出のことも考えなくていいというのは初めてで(笑)とても嬉しいです(笑)だからもちろん緊張や不安はありますが、今は期待のほうが上回ってますね。
──柴さんは、脚本はお読みになりましたか?
柴 読みました。その時に思い出したんですけど、僕、自分の戯曲を役者さんに読んでもらった後に「どうかな?」って聞くと、皆「出演する側に廻ったら、戯曲の良し悪しってあんまりわからないですよ」なんて言われて「絶対嘘だ」と思ってたんですけど、今回、あの時の役者の気持ちがよく判りました、自分がやると思って読むと、もうそのことしか考えられない(笑)。あと、初演を観ていなくて、舞台映像もほんの触りだけしか見ていない、といいますか、敢えて見ないようにしているので、ここはどんな風に演出するんだろうなあとか思いながら、楽しく読みました。
──それでは最後に、皆様から、お客様にメッセージをお願いします。
町田 観終わった後、みんなでワイワイと楽しめる芝居だと思うので、ぜひみんなで来てください(笑)ちなみに、前回の再演物の時は、30歳を超えていたのに初演に続いて高校生役だったので「大丈夫かな」という思いが強かったですが、今回はそういう心配はないので、安心しています(笑)
井内 絶対に、面白いので、いや、面白く、しますので・・・
町田 今、また、喋り方がおばあちゃんっぽかったよね(笑)
井内 あっ、いえそんな、あの・・・観に来てください(笑)続いて、柴さん、どうぞ・・・
柴 はえぎわ、そしてノゾエさんの世界の中で、やれるだけやりますので、よろしければ、ぜひご覧ください。
ノゾエ 本当に心から「観てほしい」と強く思える芝居なので、幅広い世代の方に観てもらえたらと思っています。普段「若い人の芝居はあまり観ない」というご年配の方にも、ぜひ来ていただきたいです。お待ちしています。
──本日はどうもありがとうございました。
(※)舞台の右・左・奥の三方の壁と、床面がすべて黒板となっており、そこにチョークで書いていくことで、空間を構築していった。例えば、バスを待っている人がいるシーンでは、その人の側に『バス停』を描いたり、水を飲むシーンでは壁に『蛇口』の絵を描き、その蛇口をひねって水を出す仕草をしたりなど。