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鈴木秀美を迎えて vol.2

トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズスペシャル・コンサート 鈴木秀美を迎えて vol.2
©K. Miura

本公演は終了しました

2013年2月10日(日) 15:00開演

【全席指定】 会員3,500円 一般4,000円 学生2,000円
三鷹市内在住または在学の小・中学生1,000円
*一般(会員)券をご購入の方とご来場の、三鷹市内在住・在学の小・中学生の方の
特別料金(電話予約のみ)。お申込みの際には住所(町名)または学校名をお伝えください。
託児サービス 500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで)
*未就学児は入場できません。
【出 演】 鈴木秀美(指揮)
トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ(管弦楽)
【曲 目】 ハイドン:交響曲第101番ニ長調Hob.I-101「時計」
ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調op.55「英雄」

TMPとチェロ奏者・指揮者の鈴木秀美によるスペシャル・コンサート第2弾です。2011年に初顔合わせとなったコンサートでは、18世紀音楽の潮流を提示するコンセプトが好評を博し、お客様からは「バロックや古典派のイメージを覆すライヴな音楽」、「モーツァルトの時代の人々はさぞその新しさに驚愕しただろうなと想像できました。新しい発見です。」などの感想をお寄せいただきました。

今回はハイドンから多大な影響を受けて大きく変容した、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」を取り上げます。作曲当初、ナポレオンへ献呈することにしていたにもかかわらず、彼の皇帝即位に失望し取りやめてしまった逸話は有名で、初版譜は表題と共に「一人の偉大な人間の思い出を祝して」とイタリア語で綴られています。現在、この作品は大編成のオーケストラで聴かれる機会が多く、「英雄」という名前も相まって、重厚で威風堂々としたイメージがつきまといます。しかし、作曲当時に近い小規模な編成で演奏されることで各楽器のメロディ、アンサンブルが明瞭に聴こえてきます。新しい時代を創ろうと颯爽と突き進む一人の若者像が、いっそう浮き彫りになることでしょう。

また、ベートーヴェンに影響を与えたハイドンの12曲から成る「ロンドン・シンフォニー」より、第101番を取り上げます。この作品は、第2楽章がチクタクと鳴る時計の刻む音を連想させることから、後世に「時計」という愛称がつけられました。

緊密なアンサンブルから生まれるダイナミックかつ生き生きとした演奏で、ベートーヴェンやハイドンのこれまでのイメージが劇的に変わること間違いなし! です。ご期待ください。

Interview 鈴木秀美インタビュー

大き過ぎないホールで少ない人数が精一杯演奏することによって、音楽のエネルギーは遥かによく伝わるんです

2011年に引き続き、2013年2月のコンサートでTMPと再び共演いただく鈴木秀美さんにお話を伺いました。
──お兄様が『バッハ・コレギウム・ジャパン』の音楽監督でチェンバロ・オルガン奏者の、鈴木雅明さんでいらっしゃいますが、小さい頃から音楽が身近な環境でお過ごしだったのでしょうか?

鈴木秀美父はアマチュアでしたがピアノが好きで、休みの日にはいつも弾いておりましたし、母は歌を歌っておりましたので、確かに音楽はいつも家の中にありました。

──そうすると音楽家を目指したのも自然の流れだったのでしょうか?

私は小さい頃ほんの少しヴァイオリンをやっていたのですが、楽器を持っていられなかったぐらい体が弱くて、それでピアノに変更しました。でもやっぱり弦楽器をやりたいと思い、ピアノの先生にチェロを勧められ、先生をご紹介いただいて、色々コンサートを聴きに行ったりして、「よし、これに決めた!」と思いました。9歳の時に音楽の学校に行こうとか言って、そんなに簡単に入れるものじゃないと怒られたり笑われたりしましたけども、そこからの基本的なラインはずっと続いているわけです。

──指揮活動を始めたきっかけはありますか?

学生時代に指揮に想いが傾いたことがありまして、尾高忠明先生と秋山和慶先生に、指揮法についてきちんと教えていただきました。一時期は「チェロを弾く」という技術・知識を持って指揮者になろうと決めていたこともありましたが、そこに「古楽」というものが入ってきて、これはもうちょっと勉強しなければダメだと思いました。指揮に関しては、いつかこの技術は役に立つであろうと一旦横に置くことにしました。楽器や歴史の勉強に専念したことは、振り返ると非常に良かったですね。

──指揮者の経験は演奏にも影響してきましたか?

自分で弾く場合には音色を作ったり音を探して表現したりと自分でしなければなりませんが、オーケストラの指揮の場合はそれを人にしていただくのですから、音色とか構造とか、自分が思い描いているゴールを弾いている人にどうやって伝えるかということが難しいわけですよ。コミュニケーションが非常に大事だと思いますね。でも、自分で曲のイメージを持ってそれに近づけていくという意味では、楽器を弾くのもオーケストラを指揮するのも基本的には同じだと思います。

──昨年はチェリスト・指揮者としてTMPと初共演されましたが、いかがでしたか?

「古楽」をやっておりますと、現代の楽器を弾いている方にとっては耳慣れないことや予期していないことを要求したりすることもあるのですね。そんな時「古楽の人だから変なことを言っている」と拒否反応を起こしたり、線引きされたりしてしまうとコミュニケーションが取れなくなりますが、TMPの皆さんは耳を傾けて私の説明を聞いたり、自分の楽器で弾き方を工夫してくれたりしてくださったので、非常に楽しい時間を過ごさせていただきました。

──次回はメインがベートーヴェンの『英雄』ですね。ベートーヴェンというと大編成というイメージがありますが…。

ベートーヴェンの場合、よく起きる誤解は、曲の構造とか曲自体が持っているエネルギーの強さと、音の強さとか人数の多さとかいうことは無関係なのに、例えば『運命』では50人も100人もいないと説得力のある演奏ができないのだと思われてしまうことです。実際、特に初期のシンフォニーは非常に少ない人数で演奏されていたわけで、『英雄』もプライベートな初演では本当に僅かな人数での演奏でした。あまり大き過ぎないホールで少ない人数が精一杯演奏することによって、音楽のエネルギーは遥かによく伝わるのです。反対に大ホールで沢山の演奏者がいると、それぞれが周りとうまく合わせてやっていくのは難しく、目一杯弾けなくなったり弾き方が変わってきたりしてしまいます。川に例えると、一番下流は水の量は多いけれども水の流れがわからない、上流に行きますと水の量は少ないけれども水の流れや水質が遥かに鮮烈にわかりますよね。
 

──今日は風のホールの客席でお話を伺っているので、よりイメージが膨らんで楽しみになってきました。

このホールの響きは非常に素晴らしいですね。クリアで透明感があります。特に『英雄』という曲は切って落とすような短い音で始まり、最後もまた短い音で終わりますので、ホールの響きも楽しめると思います。

──他にはどのような曲目を予定しておられますか?

鈴木秀美ベートーヴェンは初期において、自分が学んだハイドンの影響を強く受けています。今回はまずハイドンを、そしてそのハイドンから変容したベートーヴェン、という流れを聴いていただきたいと思います。ハイドンが晩年に作曲した12曲のロンドン・シンフォニーというセットがありまして、その中から『時計』を取り上げたいと思っています。この『時計』は、第2楽章の音型が時計のように聴こえることからその名前が付きました。ただ、ハイドンが付けたのではなく、ロンドンのお客さんたちがイメージで「○○みたいだ」と付けたのです。ほとんどのハイドンの曲名はハイドン自身とは無関係なのですよ。18世紀のロンドンの聴衆の想像力は大したものだと言えますね。

「チクタク」と聴こえる音型は、実は『英雄』の第2楽章の最後近くで少しだけ出てくるのです。音楽自体は全く別の質のものですし、たまたまそうなったのでしょうけれども、私にはちょっと楽しいのです。先生の影響から逃れようとしてきた革命児ベートーヴェンに、ふとハイドンが顔を出したような瞬間です。ハイドンを聴いてからベートーヴェンを聴くと、何が変わったか、人間と音楽の関係がどう変わったかということが痛いほどよくわかると思います。お客様は、このコンサートは覚悟して聴いていただきたいですね(笑)。

──ところで鈴木さんは色々な顔をお持ちで、ご自身でもオーケストラ・リベラ・クラシカを率いて、「オリジナル楽器」で演奏されているということですが、「オリジナル楽器」また「古楽」について詳しくお聞かせいただけますか?

弦楽器の場合は胴体自体が変わっていなくても内部の構造とかネックの部分とか、色々な部分が少し変わったりして、19世紀の前半頃に改造されて現代へ至るものがほとんどなんですね。貴族の楽しみであった音楽が市民のものになって、演奏会場が広くなって、もっと大きな音が出したいということになり、その大きな音に対応するには楽器の構造を変えていかなければならない、ということで変わってきたわけです。すると今度はそれに対して音楽が出来ていく。つまり、いま私たちが見ているものは、かつての有名な製作者たちが作ったオリジナルのものではないので、それをオリジナルの状態に戻したものを「オリジナル楽器」と。あるいは改造が行われ楽器の作り方が変わってくる19世紀前半頃よりも前の作り方で作っているもの、現在作ったものでもそういうものを「オリジナル楽器」と呼ぼう、と。

「古楽器」というと「私の楽器は古いですよ」という方も沢山いらっしゃるわけで、「古楽器」という名前は、結局それを定義できないんですよ。例えばフルートの場合、現在は指穴が2個、蓋とかキーが一杯付いていて金属になっていますが昔は木製で、ほとんどはただ穴だけで届かない小指のところだけキーがあるような状態でした。ですから出てくる音も音量も現代の楽器とは出来ること出来ないことが色々違うわけです。曲の一番新鮮な姿を求めるにはどうすればいいか、ということを考える、楽器を合わせ、弾き方を合わせる、それがオリジナル楽器を使うということであり、そのように勉強する時の姿勢が「古楽」というんですね。ですから「古楽」というのは、歴史が古い音楽だけではなくて、その時代時代にオリジナルがあり、その楽器の状態と、音楽と楽器との密接な関係とか、あるいは、その楽譜はこのような前提で読まれていたとか、そのような姿勢があるわけです。例えばバルトークは1945年に亡くなっていますから、その頃にスチール弦を使っていた人はまだほとんどいないんですね。ヴァイオリンの一番上の弦だけ、ごくわずかなソリストが使っていましたけれども、まだ基本的に弦楽器の音は全部ガット弦*1です。ですからバルトークをスチール弦で弾くのは、バルトークに対してオーセンティックではないんですね。バルトークを知っている年代の方もいるでしょうけれど、それぐらいの時代でも、もう今とは少し違ってしまっているということはあるわけで。どの時代の音楽においても、同じように当てはめて考えようということが「古楽」なんです。

──楽譜の校訂ですとか執筆活動、またCDを色々とリリースされていますが、そのあたりの活動も教えていただけますか?

鈴木秀美執筆というとなんだか大袈裟ですが、かれこれ30年ぐらい前からでしょうか…、例えばリサイタルをするにしても使う楽器が違うとか、調律が違うとか、そうしたら演奏会をやる時に曲目解説とかプログラムとかを自分で書かないと頼める人がいなくなってしまったんですね。そうやって書いたものがだんだん溜まってきたので、それをまとめて本にして、というようなことから始まりました。いま執筆中のものでバッハの無伴奏組曲に触れているんですけれども、世界中のチェリストが大事にしているこの曲は、細かいところがどうなっているかという説明がちゃんと字に書かれているものがほとんどないんです。これを読んでいただければ、「何故こう弾くのか」などということが書いてあります、暴露本みたいな感じですけれども、少なくともあの時点で私がどう考えていたかという記録が一つ残るということで。

またCDは、「アルテ・デラルコ」というレーベルがそのまま私の会社の名前になっていまして、「オーケストラ・リベラ・クラシカ」のライヴ録音や、室内楽も何かセッションをしたりしたものを出しています。自分が演奏をしたり、それから自分がプロデュースをしたり、時には聴いてディレクターをして出すっていうのもありますね。

──そういう総合的な想いが今回のTMPの中にも表現されるのであろうと思うのですが、どういう想いを皆さんに伝えたいですか?

先ほどの話と重複しますけれども、このようなサイズのホールで少ない人数で『エロイカ』をやるのは大仕事なんです。こういう言い方をすると大変失礼ですが、例えば、ひとつのパートにヴァイオリンが10人いれば1人が気を抜いても10分の1しか減らない、でも4人しかいない時に1人が気を抜いたら4分の1減るわけです、それはお客様にもすぐにわかるんですよ、ですから全く気が抜けないんです。でもそれは1人ずつがリサイタルをずっとしているような気分で弾いていただかなければならないので、やりがいがあることだと思うんですね。ここではお客様に、1人ずつの演奏が細かく見えてしまうわけですから、それだけ自分を主張することも出来ますし、すごく刺激的な時間になると思うんですね。非常に大きなホールで、大人数で前座的にハイドンをやってしまうことも多いのですが、そうではなくこういった場所で弾くとハイドンの独特なユーモアのセンスとかちょっとした語りかけとか遊びとか、はぐらかしとか、そういったことが手に取るようにわかってきます。本来、ハイドンもベートーヴェンもどちらもこれ以上大きなホールでやるべきじゃないんですね。

*1 ガット弦:弦の芯材(または弦全体)に、ガット(羊の腸)が使われている弦。現代の弦楽器では、通常はスチールやナイロンが使用されている。

(2012年8月23日 風のホールにてインタビュー)

※オーケストラ・リベラ・クラシカのウェブサイト☞http://olc.hidemisuzuki.com/
 アルテ・デラルコのウェブサイト☞http://www.artedellarco.com/

三鷹市芸術文化センター
風のホール

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