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瀧川鯉昇独演会

聴けば必ず癖になる、どこかとぼけた円熟味。鯉昇落語で笑顔の師走!

瀧川鯉昇独演会

本公演は終了しました

2012年12月 1日(土) 14:00開演

【全席指定】 会員2,700円 一般3,000円 高校生以下1,000円
託児サービス 500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで)
*未就学児は入場できません。
【演 目】 落   語 春風亭柳若
落   語 瀧川鯉昇
    仲入り
江戸曲独楽 三増れ紋
落   語 瀧川鯉昇

まさに"こぼれ落ちるが如き"面白さ。聴けば聴くほど癖になる、
どこかとぼけたベテランの味。瀧川鯉昇、三鷹で初独演会!

Interview 瀧川鯉昇(たきがわりしょう)インタビュー

私の芸風は、全編が休憩時間、それでいいんです(笑)。

この度、星のホールで初めての独演会に出演される瀧川鯉昇師匠にお話を伺いました。
──これまでにゲストとしてご出演いただいたことはありますが、三鷹のお客様の印象はいかがですか?

瀧川鯉昇いやもう、このあたりは都会ですね。寄席を取り巻くエリアの一部といましょうか、むしろこっちが地方出身でお客様が江戸っ子という印象で、くどく演出しなくても「いいよ、わかってるよ」という雰囲気ですね。我々が持っているものをストレートに表現しても返り(反応)が早いですね。わかりやすく言えば、少しくらい間違っても大丈夫、ということですかね(笑)。

──三鷹での独演会は初めての鯉昇師匠ですが、三鷹近辺には縁があるそうですね。

ええ。私の二人目の師匠の春風亭柳昇の住まいは三鷹駅の北口の武蔵野市関前でしたので「三鷹の師匠」と呼ばれていました。師匠の家に行って、兄弟弟子が何人か集まれば、おのずと帰りは三鷹駅あたりを散策するわけです。だから夜の遅い時間と赤ちょうちんしか知りませんけどね(笑)。
最初についた師匠の八代目春風亭小柳枝は阿佐ヶ谷でしたし、中央線沿線には縁があるようです。阿佐ヶ谷から三鷹まで、師匠に頼まれたものを運ぶのに、電車賃が惜しいし、道もよくわからないから、終電が出た後の線路を歩いた思い出もあります。ただねえ、夜中の2時か3時くらいの時間に、灯りのついてない1両編成の新聞を運ぶ電車が通るんですよ。それに慣れるまではちょっと怖かったですけど(笑)。だから明るい時は地理がわからないけど、暗くなると詳しいですよ(笑)。

──1990年に真打に昇進された時には、春風亭の亭号で春風亭鯉(り)昇(しょう)でしたね。

落語家の芸名は洒落が多いんですね。三笑亭可楽(さんしょうていからく)は「山椒は小粒でもひりりと辛い」とか、初代三遊亭圓生は最初、「山遊亭猿松(さんゆうていえんしょう)」って名乗っていて山で猿が遊ぶという情景そのままなんです。瀧川鯉昇(たきがわりしょう)も鯉の滝昇りという意味ですね。ただ、前任者の瀧川鯉昇という方は、昭和2年に高崎に旅に出たっきり帰ってこなかったらしいんです。だから落語家の世界では、名籍を継ぐ時にはお墓参りをしたり、法事に出たりするものなんですが、前任者がどこにいらっしゃるかわからないので仕方なく、とりあえず半分変えて春風亭鯉昇としました。で、その後15年経ったんですが、親戚の方などからも何の連絡もなかったので、もういいでしょう、ということで瀧川鯉昇と変えました。師匠にはその時「国語審議会では鯉を『こい』とは読むけど音読みの『り』は正式には認められていなくて当て字だぞ」って言われたんですけど…変えた後でそう言われてもねぇ(笑)。ただまあ、うちの隣の人なんか20年も隣に住んでいるのに、読みにくいらしくて未だに「こいのぼりさん」って呼びますよ。もう訂正するのも面倒だからそういうことにしてます(笑)。

──落語家か、または役者になりたかったそうですね。

瀧川鯉昇静岡県の浜松出身なんですけど、関東と関西のちょうど中間の中途半端な文化圏で、テレビ番組も東京と同じ時間帯には放送しないんです。昔、『シャボン玉ホリデー』っていう人気番組があって、お笑いが好きでよく見てたんですけど、静岡では金曜日の夕方6時からだったんですね。だから中2の英語の試験で「holidayを和訳せよ」ってのがあったので「金曜日」って書いたんです。そうしたら先生に職員室に呼ばれて「お前が生涯静岡を出ないならこれで正解だけど、もしも静岡を出るなら、後々大変な恥をかくことになるが、どうする?」と言うんです。僕は芸人になりたいと思っていたので「東京か大阪のどちらかに行きたいです」と言ったら「わかった。だったらこれは違うぞ」と言われ、不正解になりました。

──いい先生ですね(笑)。役者の方も興味があったのですか?

当時は映画しかなくて、それも時代劇ですね。時代劇の覆面が良く似合う顔立ちなんで(笑)、そういうのがやりたいと思って、NHK浜松局の放送劇団に応募したら、詩の朗読か何かして、3日もしないうちに合格って来たから「才能あるな」と思ったら、僕しか受けていなくて即合格だったようなんです(笑)。そこで役者とか芸人になりたい仲間に出会ったんですけど、ちょうど1つ上の先輩が新国劇に入ったんです。そうしたらその先輩がどんどん痩せていくんです。毎日が稽古の連続で全くアルバイトが出来なくて、食べ物も師匠が食べたお寿司の器を下げるときにガリが残っていればいただいてそれでおしまい、みたいな生活だと聞いて…。その先輩が言うには「落語家の方が飢え死にするまでに猶予がありそうだぞ」って。で考えて、田舎者で頼る当てもないし、親からも勘当同然で上京しましたから、落語家の方にしようかと…ものすごい不純な動機ですね(笑)。

──入門はどのようにされたのですか?

先代の小柳枝師匠は弟子を取る気がない人だったんで、最初は会ってもくれなかったんです。そんなある日、師匠に会いたくて新宿の寄席の楽屋に行ったら、「飲み屋にいる」と言われたので行ってみたらお客さんと大喧嘩していたんです。それを「まぁまぁ」と仲裁して、流れで一緒に2、3軒飲み歩くことになり最後に師匠の家に行って、酔っ払って泊まっちゃったんです。で翌朝、目を醒ました師匠が「誰だお前!?」「弟子入り志願です」「あっ、そんなこと言ってたなぁ」となって、やっと話を聞いてもらえました。ラッキーでした。

──鯉昇師匠ご自身もたくさんのお弟子さんを育てていらっしゃいますが、落語の修業とはどのようなものでしょうか?

落語の特殊な修業は自分でやりたければやればいいわけですが、まずは普通のあいさつや「ありがとう」「すみません」などの礼儀が普通にできればいいんですよ。それができなくて辞めていく人が多いんです。

それと、あまり厳しくしているつもりはないですが、この世界では最初から「No」と言ってはいけないというのがあるんですね。例えば「目で南京豆を噛んでください」と言われたらまずは「はい」と言って何とか目で噛もうとしてみて、それから「どうだった?」と言われたら「あ…噛めませんでした」みたいな。小言の聞き方ってのもあって、例えば「なんで遅刻したんだ!?」と言われて言い訳をするともうひとつ小言が増えるので、相手が怒っている間はじっと頭を下げていると頭の上を小言が通り過ぎるという…落語の噺にもあるんですけどね(笑)。で、少し時間が経ってから「ところでお前なんで遅刻したんだ?」と聞かれたときに「実は電車が停まってました」と言うと「なんだ、小言言っちゃって悪かったな。それじゃ、これでラーメンでも食って帰れ」と、言われる言葉も全然違ってくると…。

機転が効くかどうかと言いますか…学校の成績じゃないんですよね。学校では教えないようなことをやってる世界で、むしろ子どもたちには聞かせたくないような会話ばかりの業界なので(笑)。利口な奴は他の人がしくじった時に、怒っている人と、怒られている人の謝り方を良く見ていますね。周りにドジな人が多いほどと勉強になるという業界ですね(笑)。

──お話を伺っていると、とても自然体で人情味あふれるお話が楽しい鯉昇師匠ですが、落語を演じる上で何か心がけていることはありますか?

瀧川鯉昇ないですね(笑)。向上心がないといけないというのもあるかもしれませんが、オリンピックとかと違って勝ち負けのない世界ですからね。色んな考え方や芸風の方がいますから。一生懸命の人がいたり、私みたいなのがいたり…。だから落語は飽きないんじゃないですか。僕は「聞いてください」くらいの気持ちはありますが「笑ってください」というのはないし、「よかったら寝ます?」くらいの感じで…(笑)「できたら全員寝てください。そうしたら帰れるし」くらいなもので(笑)。私の芸風は、全編が休憩時間、それでいいんです。映画なんかで、最初のシーンちょっと見逃すと全然楽しめないっていうのがありますけど、僕の場合そういうのありませんから大丈夫ですよ(笑)。これ以上力も入らないし、これ以上抜けると困っちゃうからこれ以上抜けることもないと思います(笑)。

──最後にお客様にメッセージをお願いいたします。

娯楽ですから、思いっきりくつろいでいただき、笑う、涙を流す…は皆様のご自由でございます。散歩がてらくらいのつもりでお越しいただけるとよろしいかと思います。お待ちしております。

(2012年8月14日池袋にてインタビュー)

三鷹市芸術文化センター
星のホール

〒181-0012
東京都三鷹市上連雀6-12-14
0422-47-5122 (チケットカウンター)
0422-47-9100 (施設受付・事務局)
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