今年の3劇団も、いずれ劣らぬセリフの切れ味と緊張感に満ちた舞台を作り上げる力を持ち、
「マームとジプシー」と「はえぎわ」は本年4月に演劇界の芥川賞である岸田戯曲賞を受賞したほか、「モナカ興業」の演出家は平成21年度文化庁芸術祭賞優秀賞を受賞するなど、今、最も注目を集める劇団ばかりです。星のホールから、新しい才能が羽ばたく姿を、ぜひご覧ください。
本公演は終了しました
2012年10月19日(金)〜28日(日) 全12公演
【全席自由】 (日時指定) |
会員 前売2,500円・当日2,800円 一般 前売2,800円・当日3,200円 大学生1,000円(前売・当日とも) 高校生以下500円(前売・当日とも) ★早期観劇割引・平日マチネ割引 会員 前売 2,200 円・当日 2,500 円 / 一般 前売 2,500 円・当日 2,800 円 |
【 作 】 | フジノサツコ |
【演 出】 | 森 新太郎 |
【出 演】 | 熊坂理恵子、内田悠一、林竜三、アワヤ鮎美、平田耕太郎、 長野尚以、辻村優子、日向野敦子、長瀬知子 |
硬質な脚本は堂々たる演出を支え、張り詰めた演出は脚本に重さを与えていく。舞台の力を信じる者たちが作りあげた静かなる自信、モナカ興業。
劇団プロフィール
2005年に活動開始。2010年上演の『理解』以降、作のフジノサツコは現代社会における人生の不安・幸福・孤独を、より断片的にモザイク状に描き出す。その混沌とした劇世界を、演出の森新太郎がシャープに力強く立ち上げる。
http://www.k4.dion.ne.jp/~monaka
[モナカ興業]
はじからはじまで腕いっぱいに伸ばしてみる。
確かに掴んだ筈なのに何も手に入れていない。
夜、電車に乗ると先に出た筈のこの車両を後発の車両が追い越して行く。
先を見ようと目を凝らすけどいまこの瞬間しか映らず、それらもすぐに過ぎ去って行く。
期待と失望の連続は日常への回帰で、いつも何かであろうとすれどその形は掴めず、すぐそばにいた知人は今日は別の場所にいる。
併走していた筈の電車も少しずつ進路を変えて過ぎ去り、その窓々には顔色もわからぬ人たちが額を押しつける。
公演を控えた3劇団の作家に、今回の公演に寄せる思いを伺いました。
今回の舞台に、どんな構想を抱いていらっしゃいますか?
フジノサツコタイトルの 「旅程」とは、少し聞きなれない言葉ですが、旅の道のりやその日程を意味します。でも、何を旅というかは人それぞれで、子どもの初めてのお使いだったり、社会人研修1年目だったり、長年勤めあげた会社を退職する初老の男の1日だったり、子どもや旦那が出かけている主婦たちの昼の1時間だったり。もちろん、人生そのものを旅に例えることもよくあります。思うようにならないことも多い毎日ですが、それ故に時刻表通りには行かない旅を描ければと思っています。
三鷹のホールには初出演です。どんなイメージをお持ちですか?そしてどんな風に使ってみたいなと思っていらっしゃいますか?
ホールは、シンプルにも複雑にもいろいろな使い方が出来る自由度の高い劇場だと思いました。演出の森と美術プランナーさんがモナカにあった冒険的なプランを考えてくれると思います。
初めて演劇に触れた体験はいつで、どんな体験でしたか?
幼稚園の時に、親とはぐれて漂流するペンギンというのをやったことがあります。演出家の森さんは、大学時代だそうです。10メートルぐらいある赤い褌(ふんどし)を後輩に締めさせ、それが地面につかないように走らすというようなチラシが残っています。テントでお芝居をやった時は、お客様に花火の火花を飛ばし、たまたま観に来ていた父親に、「客に迷惑をかけるぐらいなら演劇やめろ」と言われたそうです。
初めて脚本を書かれたのは(初めて演出をされたのは)いつですか?
長編はモナカ興業の第1回目が初めての脚本です。森さんの初演出は、10メートルの褌の芝居じゃないでしょうか?
この公演を観て、演劇の世界を志したというような公演はございますか?
演劇を志すきっかけではありませんが、記憶に残る公演はたくさんあります。マイケル・フレイン作、「コペンハーゲン」などそのひとつです。森さんは演出なのでまた別の意見かもしれません。
「理解」 撮影:小尾幸春
(もちろん、今後その分野に進まれるかもしれませんが)映画や小説など数多くある芸術のジャンルの中で、演劇の持つ魅力とはなんでしょうか?
正直わかりません。それが明確にわかれば楽かもしれません。(笑)ただ、やる側の魅力としては、健康にいいところでしょうか。脳と身体の両方を適度に使うので、稽古が始まると普段不健康な人でも健康になります。それに声を出すのでストレス発散にもなって、お薦めです。
舞台を作る上で、大変なこと、うれしいこと、色々あると思いますが、どういう点が一番大変で、どういう時に一番喜びを感じますか?
最初の企画から小屋押さえ、それから出演者の人選やスケジュール調整、スタッフさんとのやりとりや票券業務、予算の管理、他にもひとつの公演を立ち上げる為には小さなことから大きなことまで頭を悩ます事で一杯です。でも、一緒に芝居を創って頂いているスタッフさんをはじめ関係者の方々、出演者のみんなが楽しんでやってくれている瞬間を見つけるとこっそり喜びます。あとはお客様に面白いと言って頂いた時はこの上なく嬉しいです。
作品を作る上で、どのようなときに、ストーリーやアイデアの発想が浮かんできますか?
ゆっくりとした時間の中です。ストーリーやアイデアの卵みたいなものは、忙しい毎日の中で拾うこともあるのですが、集中してじっくりと考えたい時はなるべく時間をつくるようにしています。
いま、演劇以外の分野で面白いと思うものはありますか?
関西出身なので、落語で言えば枝雀が好きです。でも、ドキュメンタリー映画(『小三治』)で見た、小三治の粋なところも好きです。小説も読みます。日本のもの好きですが、外国ものに嵌まった時期もありました。あとは、シルク・ド・ソレイユなんかのエンターテイメント性の高いものや笑いも好きですし、結構、何でも面白いと思うほうです。映画もよく見ます。
今回の公演に向けて、お客様へのメッセージをお願いします。(どういったところを特に観てもらいたいかなど)
毎日を頑張っている人たちに共感して貰えるようなそんな舞台を創れればと思っています。どうぞ世代や男女を問わずにお越しになって下さい。ご来場、お待ちしております。