人生を愉しみ、音楽と自然をこよなく愛するチェリスト、ブルネロの心の歌を聴く。
マリオ・ブルネロ ©堀 衛
本公演は終了しました
2012年 7月3日(火) 19:15開演
【全席指定】 | 会員 S席4,500円・A席3,600円 一般 S席5,000円・A席4,000円 学生席2,500円 |
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500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで) *未就学児は入場できません。 |
【出 演】 | マリオ・ブルネロ |
【曲 目】 | J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007 J.ウィア:Unlocked G.カサド:無伴奏チェロ組曲 J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲第6番 ニ長調 BWV1012 |
世界屈指のチェリストの一人、マリオ・ブルネロが、風のホールに初めて登場します。ブルネロは、風のホールのお客様にはお馴染みのバロックヴァイオリンの鬼才、ジュリアーノ・カルミニョーラ、ヴェニス・バロック・オーケストラと同じイタリア北部ヴェネト州出身です。幼い頃には町の小さな音楽学校でギターを学び、その後チェロに転向したブルネロはA.ペンドラメリ及びA.ヤニグロに師事。1986年、イタリア人として初めて第8回チャイコフスキー国際コンクール優勝及び批評家特別賞、聴衆賞を受賞しました。
以降、国際的な舞台での活躍はめざましく、チェリストと指揮者の二役を同時にこなしています。
ブルネロは2007年に自ら主宰する「チェロ・トレッキング」の一環で、愛器マッジーニを背負い富士山に登り、頂上でバッハの無伴奏作品を演奏しました。歴史や伝統に敬意を表し、人生を愉しみ音楽と自然を愛するからこそ生まれてくる味わい深い音楽は、聴き手の心を捉えて離しません。
この度、三鷹で行われるのはブルネロ一人による無伴奏リサイタルです。チェロ作品のバイブルとも称されるバッハの無伴奏チェロ組曲より第1番と第5番をプログラムの冒頭と最後に据え、それらに挟まれるように20世紀の作品が演奏されます。
イギリスの作曲家ウィアによる「Unlocked」は、1930年代に収録されたアメリカ南部の囚人たちの歌に霊感を受けて、1999年に作曲された作品です。また、スペインが生んだ偉大なチェリスト、カサドによる「無伴奏チェロ組曲」は1926年に作曲され、恩師カザルスに献呈されたものです。
チェロの響きに乗って情感豊かに綴られるブルネロの心の歌。今季、都内でブルネロの無伴奏リサイタルが聴けるのは三鷹だけです。風のホールならではの親密な空間で味わうコンサートは、忘れがたい特別なひとときになるに違いありません。
──ブルネロさんは幼い頃にギターを習っていたそうですが、チェロとの出会いはいつ頃でしたか。
12歳のときに、ギターの先生がチェロを手にしている私を見て「君にはチェロの方がぴったりだね」と言ったのがきっかけでした。
──こどもの頃にチェロ以外に夢中だったことはありますか。もし、音楽家になっていなかったらどんな仕事についていたと思われますか。
幼い頃はこどもらしく遊ぶのに夢中でまだチェロに興味を持っていませんでした。音楽家になっていなかったら、山に関係のある仕事、例えば森林監督官や山岳ガイドになりたかったのかもしれませんね。
──影響を受けた演奏家はいらっしゃいますか。
私は師事した全ての先生に影響を受けました。音楽的にだけでなく、人間的魅力で生徒を惹きつける先生の存在は、きわめて重要です。また、作曲家や芸術家の中で影響を受けた人がいるかといえば、それはベートーヴェンかもしれません!彼は常に私の心をとらえてやまなかった人物ですから。
──ブルネロさんにとってチェロの魅力とは?
演奏する人に性質のよく似た楽器であるというところがチェロの魅力とでも言いましょうか。作曲家のソフィア・グバイドゥーリナ(注1)も、チェロは弓と弦で動かす必要のある神経系統をもったボディと言っています。
(注1)ソフィア・グバイドゥーリナ(1931〜 )/ロシア連邦タタールスタン共和国出身、ドイツ・ハンブルク在住の作曲家
──最近の音楽経験の中で何か心を動かされた出来事は?
この間、カラヤンが指揮し、ジェシー・ノーマンが歌ったワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』のヴィデオを見直してとても感動しました。
──ところで、砂漠や山の中といった広大な場所で演奏をするというブルネロさん主宰の「チェロ・トレッキング」についてお聞かせください。このプロジェクトのアイディアはどのように生まれたのでしょうか。また、ご自身の愛器マッジー二を毎回背負っていくのですか。
ええ、旅をする時はいつもマッジー二と一緒です。「チェロ・トレッキング」は山歩きを愛する方々に音楽体験を広めるために生まれたプロジェクトです。出発する時点では予め計画されず、音楽を演奏し、聴いてもらうために最高の場所をトレッキングをしながら見つけて行くのです。その過程が自由に満ち溢れていて、私は好きなんです。
──2007年に富士山で行った「チェロ・トレッキング」についてお聞かせください。
特に私の感情を揺さぶったことが二つあります。一つは、7合目に到着しご来光を待っていた時のことです。私たちヨーロッパ人にとっては、日本の日の出は世界で最初に見られる太陽(注2)であり、非常に強いパワーを宿した象徴なのです。もう一つは、山頂に到着した時のことです。山頂に辿り着いた満足感と音楽を愛する日本の方々へのメッセージが届いたことに感動しました。
(注2)日本のことをイタリア語ではSol levante(日出ずる国)とも言います。
──7月3日のリサイタルに話を戻します。ブルネロさんはバロックから現代音楽まで非常に幅広いレパートリーをお持ちです。今回のリサイタルではバッハ、カサド、ウィアという非常に興味深いプログラムが組まれていますが、そのコンセプトをお聞かせください。
すべてはバッハの音楽から始まります。今回取り上げたカサドやウィアによる現代の作品は、民俗音楽から大きなインスピレーションを得て書かれています。今回のリサイタルでは、あらゆるものを内包するバッハの音楽と、2人の作曲家の作品に見られる民俗音楽との対話を作りたいと思います。そうすることによって、バッハの作品の中にも民俗音楽からのインスピレーションを見出せるのではと思っています。
──最後に三鷹のお客様へメッセージをお願いします。
今回の演奏曲目にイタリア人の作品は入っていませんが、皆様には基本要素として歌があるイタリア文化のフィルターを通して演奏曲目をお聴きいただけたらと思います。