近そうで遠く、遠そうで近い"いつの日かの日本"の姿を見事に描ききった、
会話劇の雄、土田英生の世界。第2弾。
『燕のいる駅』初演より 撮影:松本謙一郎
酒井美紀 内田 滋
千葉雅子 土屋裕一
中島ひろ子 久ヶ沢 徹
本公演は終了しました
2012年 5月18日(金)〜27日(日) 全11公演
【全席指定】 | 会員: 前売4,000円 当日4,500円 一般: 前売4,500円 当日5,000円 高校生以下1,500円(前売・当日とも) |
★早期観劇割引(5/18(金)〜20(日)の4公演のみ) | |
会員: 前売3,500円 当日4,000円 一般: 前売4,000円 当日4,500円 高校生以下1,000円(前売・当日とも) |
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500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで) *未就学児は入場できません。 *5/19(土)15:00・19:00のみ |
【作・演出】 | 土田英生 |
【出 演】 | 酒井美紀 内田滋 千葉雅子 土屋裕一(*pnish*) 尾方宣久(MONO)/中島ひろ子/久ヶ沢徹 |
【サイト情報】 | MONO公式ウェブサイト http://www.c-mono.com |
(託)...託児サービスあり[*5/19(土) 15:00・19:00 のみ] ★...早期観劇割引
*未就学児は入場できません。
春、燕が巣をつくる頃─
昔なつかしい日本の風景を模してつくられた「日本村四番」。
そこにある駅も一昔前のローカル線の駅舎を思わせる。
いつもと変わらない穏やかな時間。
しかし遠くの空にはパンダの形をした雲。
突然、人は消えた。理由は分からない。
駅に残った人々は穏やかな景色の中でただただ待つ。
これが世界の終わりなのか?
見上げる空にはパンダ雲が不気味なうねりとなって
ゆっくりと広がっている......。
人間関係の奥深い部分を自然な会話の中に溶かし込んでいく、その見事な会話の筆致に定評のある劇団「MONO」の土田英生が、自らが選んだ俳優たちとともに作り上げる舞台、土田英生セレクション。一昨年の星のホールで上演された「─初恋」も大評判だったこのシリーズの、今回の作品は「燕のいる駅」。
近そうで遠く、遠そうで近い"いつの日かの日本"の姿を描いた、おかしくて、そしてどこか物悲しき緊張感に包まれた、珠玉の舞台がここにあります。
【土田英生さんからのメッセージ】
自作を完成させて再演する企画、土田英生セレクション。第一弾は『─初恋』でした。そして今回その第二弾が決まりました。作品は『燕のいる駅』。初演以来、ありがたいことに嵐の相葉さん主演の公演などを含め様々な場所で上演してもらって来ました。
今回は自身の演出で大幅に書き替えて上演します。穏やかに世界が終わって行く日を描いたこの作品。企画が決まったのは昨年の2月。あれから震災などがありました。そうした経緯を踏まえての書き直しになります。「燕のいる駅」の決定版です。
誰もが共感できるような「切なさ」を表現したいでですね。隣にいる人を大切にしたくなるような…
──数多くある自作の中から、今回、土田さんご自身が「燕のいる駅」を選ばれた理由は?
土田:97年に外部に書き下ろした戯曲なんですが、以来、たくさんの団体に上演してもらえた作品でして、どの舞台も本当に面白かったのですが、自分で演出したのは99年の劇団公演のみだったので、いつか再び自分で演出して「決定版」のような舞台を作りたいと思っていたんです。ただ、さすがに15年前に書いた台本なので、若干古くなった部分もあって、一度きちんと書き直したいという思いもあり、この作品を選びました。
──どのようなコンセプトで作られた作品なのでしょうか。
土田英生さん土田:平和な懐かしい日本の風景があって、燕が巣を作る頃、穏やかな風が吹いていて――。そんな時に世界が終わったらどうなるんだろう、と思ったことから書いた作品です。一見、会話はのどかで牧歌的な雰囲気なんですが、背後にとんでもない何かがある。空にはかわいい形の雲が不気味に浮かび、そして周りの人間がだんだんいなくなっていく・・・というお話しです。実は、自分が小学生の頃に「ノストラダムスの大予言」という本が大ヒットしていて、それを読んだらもう怖くて怖くてたまらなくて、総理大臣に「この本を読んでおいてください。じゃないと世界が終わりますよ!」って手紙を書いたくらいなんです!(笑)。親父が受け取って「出しておいてやる。」と言ってましたけど(笑)。たぶん出さなかったとは思うんですが(一同爆笑)。それ以来、無意識にずーっと不安で、世界の終わりということを考えていたのかもしれません。
──MONOで上演されたのが、まさに、ノストラダムスの大予言で世界が滅亡すると唱えられていた99年の7月ですね。
土田:そうなんですよ。だからその想いが色濃く反映されていたとは思います。でも、書き下ろした97年や、MONOで上演した99年当時は、まだこの舞台の世界は絵空事だったんですよね。実際、この公演は震災をテーマにした作品ではないのですが、昨年の東日本大震災で引き起こされた原発事故は本当に恐ろしくて、テレビで強制避難区域の映像を見ても、風が吹いていて、花が咲いていて・・・一見、普通の風景なのに、でもそこには誰も住んでいない。この作品で描いていた架空の世界が、今現実に目の前で起こっているという、そういった事も考えながら脚本を書き直しました。
久ヶ沢徹さん久ヶ沢:台本を読んだ時に、これは15年前に書かれた作品ではなく、現在の状況を踏まえて、今回書き下ろしたとお客さんに思われるんじゃないかなというくらいタイムリーな作品になっているなあと思いましたね。去年の震災以来、どの劇作家の方も、一度「震災後」というフィルターに通した作品を作ろうとされている中で、そのことを意識する以前に作られたこの作品が、どういう舞台になって、自分自身がどういう風に演じていくのかは、本当に楽しみです。
土田:実際、この作品を上演することを決めたのは、震災の前でしたから。
久ヶ沢:そうだったんですね。観終わった後に「この作品、15年前に書かれたんだなあ」と思っていただくと、また一層味わい深いかもしれませんね。
──土田さんご自身が選ばれた、今回の出演者の方々をご紹介いただけますか。
土田:久ヶ沢さんの舞台をいろいろ観ていて、とにかく上手い方だなと思っていました。後日、僕の知り合いで久ヶ沢さんとよくご一緒されている演出家から「久ヶ沢さんにアドバイスをもらいながら楽しく作ってるよ」と聞いて興味がわいて、一緒にガッツリやったら気が合うんじゃないかと勝手に思いまして(笑)。あと僕は、芝居に対して真面目な人が好きなんですけど、かといって真面目過ぎる人もちょっと・・・という感じがあって、久ヶ沢さんはそのさじ加減がちょうど良さそうだなと、これも勝手に思いました(笑)。
久ヶ沢:ありがとうございます。土田さんの作品は、どういう設定においても、人間をきちんと描いているところが好きでしたので、僕もいつかご一緒したいと思っていました。あとよく、そう見えないと言われるんですが、僕は真面目ですよ(笑)。できれば公務員になりたかったくらい(一同笑)。
土田:酒井さんは10代の頃、映画「ラブレター」(95年。監督:岩井俊二。キネマ旬報第3位。酒井さんはこの映画で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞)に出演されていた頃から大好きな方で、以前からご出演いただきたいと思っていながら、なかなかご一緒できるチャンスがありませんでした。今回、その方に出ていただけるというだけで、本当に光栄ですね。
酒井美紀さん酒井:望まれて出演するというのは、役者としてとても嬉しいですね。今回の舞台、まず「燕のいる駅」というタイトルがすごく好きです。燕は渡り鳥で巣を作る場所は安心できる場所を選ぶというし、また幸せを運んでくるとも言われていますし。台本を読んでみたら素朴な会話の中に面白さもあり、大人の恋愛が素敵だなと感じました。ただの会話にならないように、読み込んで裏の裏まで演じたいと思います。
土田:内田さんは2年前に、僕の脚本の舞台(「相対的浮世絵」2010年シアターコクーン。演出:G2)にご出演されているのを観た時に「この舞台の会話は彼が繋いでいるな。僕の脚本のリズムをよく判ってくださっているな」という感じを持ったんです。舞台を支えていて本当に力がある方だと思いました。
内田滋さん内田:土田さんの作品は他とは類似しないものだと思います。自然な会話の流れの中に、ダイナミックな嘘というかファンタジーが入ってくるという不思議な世界で、とても信頼できる作品を書かれているので、今回演出を受けるのがとても楽しみです。
──皆さんの役柄を教えていただけますか?
土田:久ヶ沢さんはちょっと人生に疲れてる感じの駅員さんで、酒井さんはその駅の売店で働いている大人の女性の役です。この二人は、お互い好意は持っているのですが、なぜかそれ以上の関係には・・・という設定です。内田さんは駅員さんと親しい外国人の役なんですが、実は舞台は少しだけ未来に設定してあり、その頃舞台の世界では外国人への排斥運動があって・・・という難しい役どころを担ってもらいます。そのほかには、男性経験が皆無という50代の女性上司とか
久ヶ沢:(土田さんの声をさえぎる様に)ああ!もう千葉雅子さんの顔しか浮かんで来ない!(一同爆笑)。
土田:ええ、千葉さんです。
久ヶ沢:やっぱり!(笑)。
内田:絶対はまり役ですよね(笑)。
土田:で、その女性上司と一緒に行動している、女の子が大好きな、ちゃらんぽらんな若い男の部下が土屋君で。
内田:僕は彼をよく知っていますが、これもはまり役ですね(笑)。
土田:で、いなくなった弟を探して駅にたどり着き、そのままずっと待っているお姉さん役として中島ひろ子さん。実は中島さんは、以前からMONOの舞台をよく観てくださっていて、いつか出演したいと仰ってくださっていたので、今回、ぜひこの役でと思いお願いをしたら、僕も知らなかったんですけど、初めての舞台出演なんだそうです。
酒井:それは意外ですね。
久ヶ沢:あんなにたくさんテレビドラマや映画に出ていらっしゃるのに。
土田:僕自身、大ヒットした中原俊監督の「桜の園」(90年。キネマ旬報第1位)での演劇部部長役の中島さんがすごく好きで、いい女優さんだなあと思っていたので、その初舞台に自分の作品を選んでくださったのは、本当に嬉しいですね。そして最後に、MONOから尾方宣久に出演してもらい、世界の滅亡に関する情報を持っている「滅亡オタク」の役をやってもらいます。
──そんな、個性豊かな俳優陣の揃った今回の座組で、まもなく稽古も始まりますね。
土田:僕の芝居は特にアンサンブルが大事なので、笑いの絶えない稽古場になって、息が合ってくればと思います。
久ヶ沢:僕は、稽古は好きなんですが・・・・・・隙あらば、さぼりたいと(笑)。
土田:さっき自分は真面目だって(笑)。
久ヶ沢:嘘です、嘘です(笑)。真面目に稽古します(笑)。
土田:真面目にさぼるんじゃないでしょうねえ(笑)。
酒井:私は、今回初めてご一緒する方ばかりなので、早く慣れて、楽しく稽古ができたらいいなと思います。でも、今日土田さんとお話して、お喋りも面白くて。
土田:僕、お喋りなんです(笑)。
酒井:楽しくてよかったです(笑)。私も、真面目に頑張ります(笑)。
内田:僕ももちろん真面目に頑張ります(笑)。
土田:稽古の後に飲み過ぎないようにね(笑)。
内田:そんな、僕、そんなに
久ヶ沢:(内田さんの言葉をさえぎるように)わかったわかった、皆まで言うな(一同爆笑)。
土田:というか内田君の場合は、打ち上げの席とかで本当に気を使ってるんだよね。誰かのお酒が無くなってないかとか、淋しそうにしてないかとか。
内田:いえ、舞台の座組で年齢的に一番下のことが多いから、必然的にそういう役回りになってるだけですよ。
土田:いやあ、若くても出来ない人っているよ。その心遣いとか優しさとかが舞台で生きてるよね。
久ヶ沢:ええ?ただ酒が好きなだけだと思ってたんだけど(笑)。
内田:ええ、確かにお酒は好きですし、誘われると断れない性格なんで(笑)。
土田:じゃあ、今回も打ち上げの仕切りはよろしくね(笑)。
内田:わかりました(笑)。
──今回は地方公演もありますね。
久ヶ沢:やっぱり、東京のお客さんと受け取り方が違うこともあるので、役者としては楽しみではありますね。
酒井:食べ物も美味しいですしね。
土田:僕は、どこの食べ物も好きですが、特に九州はテンション上がりますね。「今日はどこのモツ鍋屋に行く?」って感じでね。今回もみんなで行けたらいいなあと。
久ヶ沢:名古屋はね、お客さんのアンケートがどこよりも熱いんですよ。「名古屋に来てくださってありがとう」ってたくさん書いてあって。嬉しいです。
土田:大阪は東京と反応が一番違うんですよ。それが凄く新鮮な緊張感をもたらせてくれて、ありがたいですね。
──三鷹のホールのイメージはいかがですか?
撮影:西山英和(PROPELLER.)久ヶ沢:星のホールは5年前にも出演(97年「ツグノフの森」作・演出:G2)したことがありますが、初めて舞台に立ったとき、それまで何度か観客として客席から観ていたイメージとのあまりの違いにまず驚いて「うわっ、でかいな」と、とにかく舞台の広大な空間に、かなりビビリました。で、客席にまわってみると「あれ?そうでもないな」と(笑)。そのギャップが不思議でしたね。でも、いざ演じてみると客席も近いし、やりやすい空間だと思います。
内田:僕も、何度も観客として観にきていて、久ヶ沢さんの出演されていた「ツグノフの森」も観ましたし、面白い作品をいろいろ上演してるなあと思っていました。今回初めてその舞台に立つので、ワクワクしています。
酒井:私は18歳で東京に出てきてから、この近くの大学に通っていたので久しぶりにこの辺りに来ることができて懐かしいです。今回の共演者の皆さんには初めてお目にかかりますが、とても楽しみで、一生懸命頑張らなくちゃな、と思います。
土田:何度か公演させてもらってますけど、ほんとに舞台を作る上での使い勝手はいいです。後はぜひ、お客様には、観劇にいらっしゃった際には「三鷹の商店街」も楽しんでほしいなと。結構「えっ、こんなところに」って感じで、魅力的なお店があるなあと思います。
──それでは最後に、今回の公演に寄せるお気持ちをお聞かせください。
土田:笑える芝居にしたいとは思いますが、誰もが共感できるような切なさを、一番観て欲しいですね。観終わった後に隣りにいる誰かを大切にしたくなるような・・・。そして今回は僕がお願いして、華のある役者さんたちに集まっていただいたので、この座組みが醸し出す空気をお客様に感じていただきたいと思います。
【土田英生セレクションvol.2『燕のいる駅』インタビュー動画】
※JCN武蔵野三鷹「MITAKA ARTS NEWS ON TV」で放映されたものです。YouTube で見る