幸田浩子
野平一郎
本公演は終了しました
2012年 3月1日(木) 19:15開演
【全席指定】 | 会員3,600円 一般4,000円 学生2,000円 |
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500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで) *未就学児は入場できません。 |
【出 演】 | 幸田浩子(ソプラノ) 野平一郎(ピアノ) |
【曲 目】 | R.シュトラウス:万霊節(8つの歌op.10 より) セレナーデ(6つの歌op.17より)、アモール(6つの歌op.68より) F.リスト:愛の夢 第3番「おお、愛よ」S.298、夢に来ませS.282 ほか |
ヨーロッパの名門歌劇場にも認められた輝かしい歌声が魅力の幸田浩子が、日本を代表する作曲家でピアニストの野平一郎と贈る、風のホールでは初めてのリサイタル。
今回は19世紀から20世紀前半にかけてドイツ音楽の爛熟期に活躍したリヒャルト・シュトラウスと、19世紀最大のピアニスト、フランツ・リストの歌曲ほかから成るプログラムで、幸田浩子の声の魅力をたっぷりとご堪能いただきます。
リヒャルト・シュトラウスはその生涯に150曲以上に上る歌曲を作曲しましたが、そのうち最も美しい作品の数々は、妻のパウリーネと育まれた幸福な結婚生活を反映していると言われています。温かで深い愛情に満ちた境地と、そこはかとなく漂う物悲しさが共鳴しあう独特の世界観とドラマが魅力の「万霊節」ほかをお聴きいただきます。
一方、リストはヴィルトゥオーゾ・ピアニストとして標題音楽を発展させ、交響詩を創始した作曲家として知られていますが、実は歌曲や合唱曲も数多く残していました。今回は、ピアノ曲としても有名な「愛の夢 第3番」の原曲「おお、愛よ」、ドイツの詩人ハイネ、フランスの文豪ユゴーの詩による歌曲の演奏も予定されています。
幸田浩子の美しくまろやかな歌と、野平一郎の機知に富み、色彩豊かなピアノで綴る、味わい深い音楽の世界。どうかお聴き逃しなく。
ヨーロッパの名門歌劇場にも認められた歌姫、幸田浩子さんにお話を伺いました。
───ご出身は大阪でいらっしゃいますね。
幼い頃から歌うことが大好きで、その日あった出来事を「今日は○○があったのよぉ♪」なんて歌にして口ずさんでいるような子どもでした。一番最初のおもちゃはピアノだったというくらい…。母が小学校の音楽の先生をしていて、また父も未だに合唱団に入って歌っているというくらい歌の好きな人なので、音楽にあふれた家庭で育ちました。
──音楽の道に進まれたきっかけは?
東京藝術大学でヴァイオリンを学んでいた姉の影響で、自分も芸大に行きたいと思ったのですが、きっかけというか… 歌を歌うことは、私にとって一番自然な表現方法でした。それに、大阪人とイタリア人って感覚が似ていると聞かされていたこともあり、子どもの頃からなんとなく、「将来はイタリアに住むんじゃないかな。」と思っていたんです。ですから最初に留学のお話をいただいた際には迷わずイタリアに決めました。
──大学院修了後、イタリアとオーストリアのウィーンに8年間滞在されましたが、海外での生活はいかがでしたか?
イタリアのボローニャで学んでいた時にウィーンのフォルクス・オーパー歌劇場のオーディションを受け、専属歌手としてウィーンに移り住みました。ウィーンでは言葉はもちろんですが、お稽古の方法から演奏会まで全てがイタリア式とは違っていました。午前10時から午後1時までと、休憩をはさんで夕方5時からも練習があり、自分のリハーサルや本番が無い日でも舞台の端の席から公演を観ていました。自分の劇場で公演が無い日は他の劇場へ足を運び、本当に充実した毎日を過ごしました。ウィーンでは1年365日のうち300日はどこかでオペラが上演されているという街なので、オペラが生活の一部になっています。『魔笛』や『ヘンゼルとグレーテル』といった演目には子ども達も沢山来てくれて、面白い場面ではゲラゲラ笑ってくれるんです。日本もこういう環境にあればいいのに…と、羨ましく思っています。
──オペラの本場で認められるにはどのようなご苦労がありましたか?
言葉の面など大変なことももちろんありましたけど、苦労というよりは「日本人で良かったな」と感じることの方が多かったですね。大学の授業で学んだ能や日本舞踊の感性や所作が、オペラを演じる際にも活きるんです。例えば舞台上で動線を確認する際に「12歩進んだところに階段があって、降りたら次は右ね…」なんて足の運びの歩数で舞台の広さを測っていると、共演者に「おお、それは日本の方式なのか!?」と驚かれたり、「今度、蝶々さんのスズキを演るんだけど、日本人の所作はこれで良いかしら?」などと尋ねられることもありました。色々な国の方々がいる中でも、四季を感じる心を持ち、穏やかで協調性があるといった日本人が持つ長所を向こうの方々はとても尊重してくださるので、日本人としての良さを改めて実感する日々でした。
──幸田さんは「コロラトゥーラ・ソプラノ」と言われますね。
コロラトゥーラというのはイタリア語で色を表す“コローレ”という言葉に語源があります。その名のとおり、色彩感豊かに装飾音を付けて音を運ぶ歌唱法というのでしょうか。私は常に色や光が音色の中に含まれていることをイメージして音楽作りをしています。
──オペラ歌手として体調管理にも気を使っていらっしゃいますか?
満員電車の中にも寒い場所にも「のど」という楽器を連れて行かなくてはならないので大変ですね。でも一番良いのはよく食べ、よく眠り、よく笑って、そして何より歌うことだと思います。お腹で息を深く吸って大きな声を出すということは、声楽家でなくても全ての方にお薦めの健康法です。
──今回の公演は日本を代表するピアニストで作曲 家の野平一郎さんとの共演ですね。
私が留学中の頃から年に1、2回はご一緒させていただいておりますが、野平さんとのステージは毎回新しい発見があり、身体の中から歓びがわきあがってくる、幸せな時間です。野平さんのピアノには神々しさと、人間としての深み、温かみが感じられ、今回の共演も心から楽しみにしております。大好きな作曲家リヒャルト・シュトラウスの作品を、このようなかたちで野平さんと演奏させて頂けるのは初めてのことですし、共演を重ねてきたリストの作品についても、より深みが増した、音楽の本質に触れることができるような演奏をお届けしたいと思っております。皆さまどうぞお越しください。