早熟の天才作曲家、モーツァルトとメンデルスゾーン。円熟の極みと華麗な存在感で
魅了するヴァイオリニスト、前橋汀子を迎えて。
[チケット発売日] 会員5/26(木) 一般6/2(木)
2011年 9月4日(日) 15:00開演
【全席指定】 | 会員3,500円 一般4,000円 学生2,000円 |
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500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで) *未就学児は入場できません。 |
【出 演】 | 前橋汀子(ヴァイオリン) 沼尻竜典(音楽監督・指揮) トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ(TMP) |
【曲 目】 | メンデルスゾーン:序曲『真夏の夜の夢』op.21 モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216 メンデルスゾーン:交響曲第5番ニ短調『宗教改革』op.107 |
昨年2回にわたり、シューマンの交響曲全4曲を演奏したTMP。今回は、生前のシューマンが「19世紀のモーツァルト」と喩えたドイツ・ロマン派を代表する作曲家メンデルスゾーンとモーツァルト、二人の音楽史上稀にみる早熟の天才作曲家に焦点を当てたプログラムをお贈りします。
コンサート前半は、メンデルスゾーンがシェイクスピアの戯曲『真夏の夜の夢』に触発され、17歳で作曲した序曲で幕を開けます。オペラ指揮者としての活躍も目覚ましい沼尻竜典ならではの自然なアーティキュレーションと研ぎ澄まされたハーモニー感覚で描かれる、ファンタジーの世界をご堪能ください。さらに、2004年日本芸術院賞を受賞し、長きに渡り聴衆を魅了するヴァイオリニスト、前橋汀子とTMPの初協演で、モーツァルトが19歳で作曲した「ヴァイオリン協奏曲第3番」をお聴きいただきます。華麗な存在感と情熱的な音色、円熟の極みで聴き手の心を揺さぶる前橋汀子のヴァイオリンと、TMPとの"化学反応"が楽しみな1曲です。
後半は、メンデルスゾーンの交響曲第5番『宗教改革』で締め括られます。ドイツの賛美歌「ドレスデン・アーメン」で始まり、宗教改革者ルターの賛美歌「神はわがとりで」で終わる荘厳な雰囲気が漂う作品です。
短い生涯の中で、時代を超えて愛される音楽を世に送り出した二人の作品を洗練された精緻なアンサンブルで描く、まさに必聴の演奏会にご期待ください。
Interview 沼尻竜典 トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ 音楽監督・指揮
国内外での公演で多忙な日々を過ごされている沼尻竜典さん。
1995年三鷹市芸術文化センター開館の際に結成したトウキョウ・モーツァルトプレーヤーズと
共に歩んだこの16年間と今後の展開について、また少年時代を過ごした三鷹での思い出を語っていただきました。
──三鷹にはいつ頃住んでいらしたのですか?
三鷹台団地ができてすぐに両親が入居したので、赤ちゃんの頃からですね。それから私立のぞみ幼稚園、三鷹市立高山小学校、第三中学校までを三鷹で過ごしました。小学校入学当時は田んぼの残る空地を通って学校へ行っていたのですが、今ではその辺りもすべて住宅地に変わりました。
──小学生の頃からピアノは熱心に練習されていたんですか?
いや、練習はそんなに一生懸命やってなかったです。桐朋学園の音楽教室には小1から通っていましたが、いわゆるハノンやバイエルなどの練習曲は好きじゃなくて、テレビCMの曲… 当時はコマソンと呼んでいましたが、耳で聴いて覚えた曲などを好きなように弾いていました。
──中学生の頃夢中だったことは?
放送委員の活動にのめり込んでました。三鷹三中でやっていたのは当時としては珍しいテレビ放送で、準備のために毎日遅くまで放送室に残っていました。人気者の先生に出演のオファーをすると、他の先生から「こんな番組は給食の時間にふさわしくない!」とクレームがついたりして… 複雑な大人の世界の人間関係も学びました(笑)。お昼の放送が終わって教室に戻った時に「おもしろかった!」と言ってもらえるとすごく嬉しくて、非常にやりがいを感じましたね。この時の経験が今も「題名のない音楽会」や「ニューイヤーオペラコンサート」など放送の仕事の際に役だっていて、「制作側の気持ちが良くわかる最も協力的な指揮者」と重宝されています(笑)。
──その後、桐朋学園の高校の音楽科ではピアノ科へ進まれましたね。
高校では作曲もやりたかったのですが、受験準備が間に合わずピアノ科に進み、副科で指揮も勉強しました。将来は何になりたいとか、何歳までに何をしたいとなどという考えは全くなく、いろいろ手を出していました。友達からは「あいつは聴音が得意だから先生になるかも」と思われてましたし・・・。実は今も「この先こういう指揮者になりたい」という戦略はなくて、自分がやりたいと思った事をやって楽しんでいるという感じなんです。このスタンスは昔からずっと変わりませんね。
──大学では指揮を学ばれたのですか?
指揮を本格的に勉強したのは、むしろ大学を出てからです。N響で、オーケストラのピアノパートを弾く仕事をしばらくやったり、新日本フィルで小澤征爾さんのアシスタントを2年半ほど務めたことで、音楽を作り出す現場が本当におもしろくなって。それで指揮者になろうと思ったんです。
──その後ベルリン芸術大学へ留学、1990年にブザンソン国際指揮者コンクールで優勝した後、本格的に指揮活動を始めて95年にTMPを結成されました。
最初は「モーツァルトを聴こう!」というシリーズのためのオーケストラという事で、自分と同じ世代の若手演奏家を集めました。当時は年に3回がオーケストラ、1回が室内楽というプログラムでしたので、室内楽奏者としても通用する力量の人を集めるよう心がけました。ですから「オーケストラ」ではなく「プレーヤーズ」という名前にしたんです。TMPのメンバーとしてしばらく在籍した後、他のオケの首席になった人も多く出て、それなりの社会的役割も果たしていると思っています。
──TMPのサウンドにはどのような特徴がありますか?
「日本のオケらしからぬ音」が出るんですよ。ほわっとしなやかでも芯がある音と言ったら良いのかな。風のホールで長年弾いていることで、このホールでの弾き方が身についているのも強みです。
──沼尻さんにとってTMPはどのような存在ですか?
芸術にも効率性が求められる今の時代に、いろいろ考え、議論しながらじっくり練習して作り上げていくTMPという場があることは、とても良いことですね。
──TMPオペラ・プロジェクトについてはいかがですか?
日本には新国立劇場を頂点としたオペラの世界がありますが、若手歌手にはその舞台へ辿りつくまでの中間地点がなく、チャンスも少ない。このような状況を改善するという意味でも、毎回オーディションを行ったりすることは、とても意義があると思います。
──MJO(みたか・ジュニアオーケストラ)についてはどうお考えですか?
サッカーチームのように、地元のジュニアチームがあって、その上にプロチームがあるというのがオーケストラでも理想の形です。MJOの子供たちは、TMPのメンバーから指導を受けることができ、その先生が実際に舞台で演奏する姿にも接することができる。この環境は大事にしていかなくてはなりません。
──昨年、元MJOの団員だった子がプロとしてTMPの舞台に立つという嬉しい出来事もありました。子どもたちへの普及活動の一つとして、沼尻さんには3年前から小・中学校で訪問授業も行っていただいています。
子供時代に学校で体験した、能・狂言教室や東京都交響楽団のコンサートは、僕の中にも強烈な思い出として残っています。芸術は、効率とかお金という物差しだけでは計ることができない素晴らしいものであり、人生を楽しくするということを感じてもらいたいですね。こうした活動はぜひ続けていきたいと思っています。
──次回9月のプログラムには、沼尻さんが何年も前からTMPでやりたいとおっしゃっていたメンデルスゾーンの「宗教改革」が入っています。また、ヴァイオリニストの前橋汀子さんとTMPとの初顔合わせもありますね。
「宗教改革」という題名だけ見ると難しそうに感じますが、祈りの心を感じる素晴らしい作品です。前橋さんは今や日本を代表する大家と言っても良いでしょう。ステージに登場しただけでオーラが出る人はそういません。どちらもとても楽しみです。