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太宰治作品をモチーフにした演劇第8回『ゲヘナにて』

サンプル「自慢の息子」
「自慢の息子」撮影:青木 司

サンプル・松井 周
第55回(2011年度)岸田戯曲賞を受賞した松井周(劇作家・演出家・俳優 1972年東京都出身)の主宰する劇団。その作品世界は、価値を反転させることと空間・身体・時間の可能性を探り続けることを特徴としており、虚無的で独特の質感は、中毒性の高いことで知られている。
代表作:『通過』『カロリーの消費』『家族の肖像』『自慢の息子』
幅広い作劇活動は、2010 年春にはニューヨークタイムズで「日本における最も重要な演出家の一人」と紹介された。

サンプル「ゲヘナにて」

[チケット発売日] 会員4/15(金) 一般4/17(日)

2011年 7月1日(金)〜10日(日) 全12公演

【全席指定】 会員 前売2,700円・当日3,150円
一般 前売3,000円・当日3,500円 
高校生以下 1,000円前売・当日とも)
託児サービス 500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで)
*未就学児は入場できません。 *7/2(土) 14:30、19:00のみ
【作・演出】 松井 周
【出 演】 辻 美奈子、古舘寛治、古屋隆太、奥田洋平
野津あおい、渡辺香奈、岩瀬 亮、羽場睦子
【サイト情報】 劇団ウェブサイト http://www.samplenet.org


★の回は託児サービスあり ■=英語字幕あり
◎の回は公演終了後、松井周によるポストパフォーマンストークを行います。
ゲスト:7月1日(金) 19:30 岩井秀人(ハイバイ主宰)
    7月2日(土) 19:30 古澤 健(映画監督・脚本家)
    7月3日(日) 14:30 三浦直之(ロロ主宰)
      ※2日(土) 14:30は松井周のみのトークです。

※以下の回におきまして、終演後、松井周によるポストパフォーマンストークを、
 追加して実施することが決定しました。
 7月5日(火) 19:30
 7月6日(水) 14:30
 7月9日(土) 19:00
受付開始・当日券販売は開演の40分前、開場は開演の20分前です。
詳細は劇団ウェブサイトをご覧ください。

自分を太宰治の生まれ変わりだと信じている男がいる。
男は無理心中で一人だけ死なせてしまった恋人、母、妻の
渾然一体となった「女神」の復活が近いことを周囲に訴えて旅に出る。
男は、友人の幸福な家庭で、ゴミ捨て場で、墓場で、
人や物や死体に話しかけながら「女神」のしるしを目の当たりにする。
しかし、誰も男の言うことを信じてはいない。
やがて、男はしるしに導かれるようにゲヘナ(地獄)に到着する。

【今回の公演に寄せて、松井周さんからのメッセージ】

今回の作品は太宰治の『トカトントン』と『女神』から着想を得ています。トカトントンという音に何度も生きていく情熱を打ち消されながら、しかし死ぬこともかなわず、「女神」にさそわれるようにゲヘナ(地獄)へ向かう男を描きたいです。
太宰治は半分死者の目でこの世を観察していたのではないかなと感じました。だから、彼がゾンビのように蘇り、現代を徘徊したらどうだろう? と思ったのです。たとえば彼は現代における救世主になったりするのでしょうか? それとも・・・

Interview サンプル主宰 松井 周インタビュー

太宰治には死者の目で世の中を見ている部分と生活者として現実を見ているという2つの面がある

──初めに今年2011年の第55回岸田戯曲賞の受賞、おめでとうございます。

松井 周ありがとうございます。候補になったのが3回目だったので、このまま取らない記録を作っていくのかなぁ、と思っていたんですけど(笑)、その意味ではほっとしましたね。

──これまでの活動を振り返ってお聞きしたいのですが、演劇を好きになったのはいつ頃からでしたか?

高校の時、演劇部だったんです。1回やってみたいと思っていたのと、当時好きだった女の子が演劇部にいたので入ったんですけど…(笑)その頃は、演劇部の人って“奇声発して変なことしてる人”みたいに思われていた気がするんですけどね。

──その時、俳優に向いていると思われましたか?

初舞台をやって、向いていると思っちゃったんですね(笑)。別の人物になっていく錯覚というか、嘘をついても怒られないという役割、が面白かったのかな。

──大学卒業後、劇団青年団には役者として入団されたわけですが、どのようなきっかけで、脚本を書き始めたのですか?

ずっと前からやってみたい気持ちはあったんです。30歳を目前にした頃に「劇作を始めるなら今が最後かも」と思い、自分の実力を試したいと思って、新人戯曲賞に応募したのがきかっけです。作っていく時は楽しかったです。自分の土俵にみんなを乗せて、役者たちも楽しんでいるのが伝わったし、自分の世界を作ることができるというのが…。

結果、入賞はしたのですが、お客さんの反応は「ちょっと気持ち悪かった」みたいな感想が多かったんですけど(笑)。

──今回は、太宰治作品をモチーフにした作品を書き下ろしで書いていただくのですが、太宰作品にはどのようなイメージをお持ちですか?

松井 周文章が特徴的でおかしいというか、「プッ」と吹き出したくなるようなユーモアがありますね。今回は『トカトントン』と『女神』という2作品から着想を得て書きました。『トカトントン』は「トカトントン」という音が聞こえてくると、情熱的に何か行動しようとしているのに、急に全く興ざめするというその感覚がすごく面白くて、恋愛をしている主人公が燃えている気持ちがあるのに、その音が聞こえてきたら急に足元の犬の糞が気になって、恋の方はどうでもよくなっちゃうという、その白けっぷりを僕も作品に取り込みたいと思いました。

『女神』はかなり風変わりな作品で、ある男が主人公を訪ねて来て「君は私の兄弟であり、私の妻は私の母でもあり女神である。」と妙なことを言うんですね。他人から見たら狂っていると思うことを、その人物は合理的につながっているようにしゃべるんですが、最後の方で主人公の妻が「狂ったって、狂わなくたって、同じ様なものですからね。あなたもそうだし…」 と言いのけるんですね。その感覚は僕にも分かる気がするんです。おかしいと思われている人と周りの人との間には始めは「垣根」があるんですが、だんだんそれが溶けて崩れていく、要するにどちらが正しいのかわからなくなっていく…それが僕の作品の特徴にも共通した特徴であると思うんです。

──今回の作品の内容はどのようなものでしょうか?

設定は現代で、自分が太宰の生まれ変わりだと主張している男がいて、その男の旅の物語なんですが、友人を訪ねたり、太宰の分身だと信じている彼が心中して亡くなった女性、妻、母親、愛人…に会いに行くような話になります。彼の太宰治としての妄想の部分と、普通の生活の部分を両方舞台に乗せたいと思います。

僕にとって太宰治という人は一旦死んで死者の目で世の中を見ている部分と、もうひとつ生活者として現実を見ているという2つの面があると思うんです。それをうまく表現したいですね。

──過去7回、毎年三鷹のホールで上演されてきた「太宰治をモチーフにした演劇」はご覧になったことはございますか?

はい、色々観させていただいています。それで思ったのは、皆さん太宰治という材料を使って、それにがんじがらめにはならず自分のフィールドで生き生きと作っていて、それぞれ違って面白かったということです。

──三鷹の地で、太宰治に取り組むということに関してはいかがでしょうか?

皆さん、太宰治にはそれぞれの像があると思うんです。今回は「僕が思う太宰はこうです」ということで「こんなの違う」とも言われても有りがたいし、「こういう見方もある」と思ってもらってもうれしいです。太宰治には暗いイメージがあるかと思うんですが、もうちょっとふざけたイメージも出したいな、と思っています。

──松井さんは三鷹での3回目の公演となりますが、星のホールについての印象はいかがですかか?

過去の1作目、2作目共に制限なく自由に使わせていただき、ポテンシャルを発揮しやすくしていただいたと思っています。今回もこの三鷹の空間をどう活かすか、これについて一番考えると思います。だから、太宰治に特に興味が無い方にも、どんどん観に来ていただきたいですね。

(2011年3月18日三鷹市芸術文化センターにてインタビュー)

三鷹市芸術文化センター
星のホール

〒181-0012
東京都三鷹市上連雀6-12-14
0422-47-5122 (チケットカウンター)
0422-47-9100 (施設受付・事務局)
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