妖しき鬼神土蜘に立ち向かうは、伝説の武将に従う、名も無きひとりの勇敢な武者。
春の嵐が幕を開けば、群雲が月を隠す平安の夜が、そこに。
本公演は終了しました
2011年 3月5日(土) 15:00開演
本公演の客席図は、こちら[PDF: 1.6MB]でご確認いただけます。
座席の様子の写真はこちらから。
【全席指定】 | 会員3,150円 一般3,500円 大学生1,000円 高校生以下 無料 |
* | 午前10時から、三鷹市能楽会による番組もございます。 弥生能のチケットでご覧いただけます。 |
* | 演能の前には、分かりやすい解説も行われ、初心者の方にも楽しんでいただけます。 |
【演目・出演】 | ![]() 狂 言 【二人大名】 山本泰太郎 舞囃子 【羽 衣】 高橋 章 仕 舞 【竹生島】 辰巳満次郎 【経 政】 當山 孝道 【網之段】 三川 淳雄 解 説 片桐 登(元 法政大学教授) |
【土蜘(つちぐも)】あらすじ
重病で苦しむ源頼光に、侍女の小蝶が高貴な薬をすすめますが病状は回復しません。夜更けに、怪しげな僧が表れて頼光に蜘蛛の糸を投げかけますが、頼光の刀に傷を負い退散します。
物音を聞いて駆けつけた家来の独武者は、血痕をたどって葛城山にある土蜘の古塚をつきとめ、見事に土蜘の精を退治して都へ引き上げるのでした。
【みたか弥生能「土蜘(つちぐも)」インタビュー動画】
※JCN武蔵野三鷹「MITAKA ARTS NEWS ON TV」で放映されたものです。YouTube で見る
Interview 宝生流二十代宗家 宝生和英(かずふさ)
二十五歳。若き宗家が目指すもの──
──東京藝術大学の邦楽科を卒業後、宗家を襲名されて2年が経ちましたが、お気持ちの変化はありましたか?
大学時代は学業も遊びも満喫していましたが卒業してからは、それまでの10倍20倍、能楽の稽古を積んでいます。その上で社会人としても一人前にならなければなりません。右も左もわからない不安の中、稽古や勉強に精一杯励み走り続けている状況なので、この2年はあっという間でした。
──宝生家は室町時代から続く歴史ある家柄です。幼い頃から能楽に親しんでこられたと思いますが、初舞台の思い出は?
大抵、能楽を習い始めるのは3歳頃からが多いのですが、私は6歳頃からでした。初舞台は「西王母」という女神の出てくる話で、その時は桃を持って出てくる侍女の役でしたが、舞台上で居眠りをしてしまい…。父に怒られましたね。
──みたか弥生能へも子役の頃からご出演いただいておりますね。
初めは小学校高学年の頃に「望月」という演目で、親の仇を討つために奮闘する子どもの役を演じましたが、少し失敗をしてしまいまして、ここでもやはり怒られた思い出があります。その後も、“後見”や“仕舞”という公演を陰ながら支えるような役どころで出演させていただきました。
──宗家のご成長ぶりを楽しみにしている方もいらっしゃると思います。今回は主役を演じられますが、演目のあらすじを教えてください。
大江山の鬼退治でも有名な武将・源頼光が病に倒れ、今日か明日の命というころ、ある真夜中に僧侶に化けた土蜘がやってきます。異変に気づいた頼光は、正体を現した土蜘に切りかかり、深手を負わせますが逃げられてしまいます。後を追う部下たちに、様々な術で襲い掛かる土蜘ですが、最後には力を合わせて戦った武者たちが勝利する、というお話です。
──見所を教えてください。
「土蜘」といえば蜘蛛の巣です。土蜘の精が、蜘蛛の糸をばっと投げかけるのですが、これがうまく飛び散りますと、大変キレイな場面になります。出演者が多いのも特徴です。侍女の小蝶とその従者、また、家来の武者の中には金太郎としても有名な坂田公時や臆病者の武者がおりまして、狂言の方が演じてくださるのですが、舞台を非常に和ませてくれるキャラクターとなっております。そして、いざ戦いのシーンとなりますと、敵味方入り乱れての大スペクタクルとなります。
──20代目の宗家として、深い歴史のある伝統芸能としての能楽を、どのように継承してゆきたいと思われますか?
伝統芸能という古くからあるものを守り伝えていくという役割があるわけですが、一方それはお客さまに守ってきていただいた歴史がある、ということでもあります。ですので、伝統に甘んじることなく、観てくださる方に能を通じてどうお返しが出来るのか、どのように貢献していけるのか、という事が大事だと思っております。
──「和の会」という会を主宰されていらっしゃると伺いました。
能楽は日本に伝わる様々な伝統文化が集まって成り立っています。普段、多忙な日々を過ごされている方々がそのような文化に触れる事で、ひとときの間、現実を忘れてリラックスしていただき、伝統文化について理解を深めていただきたいという思いから、会を発足いたしました。例えば、刀鍛冶が登場する演目では現代の刀鍛冶の方にご協力をいただいて、お話を伺い、公演当日にはその剣をロビーに展示するなどして、どういう方が作っているのかなど、肌で感じていただけるように致しました。
──能楽の他に趣味はございますか?
スキューバダイビングや山に登って写真を撮ったりする他、本や漫画を読んだりゲームも好きですね。趣味は心のバランスを保ち、内面的な部分を支える為のものですので、趣味は趣味で極めたいと思っています。
──能楽を初めてご覧になる方や宗家と同世代の若い方々に、能楽の魅力をどのように伝えていきたいとお考えですか?
能楽といいますと、いかめしいおじいさんばかりが出てきて、退屈してしまうのではないか、とお考えの方がほとんどだと思います。確かに能楽に難しい部分があることは事実なのですが、そこを補うだけの魅力があります。お面や装束の美しさも、楽しんでいただける見所だと思います。
私も役柄を演じるに当たっては、事前に入念な下調べを行いますが、その作業の過程で役柄についての理解を深めるにつれ、どんどんその役の事が好きになっていくんです。その感動を伝えていくことが、今の私に出来る事です。その結果を舞台で、ぜひご覧ください。私たち演者の若いパワーを肌で感じていただき、先入観無しで、まずは体感していただきたいですね。