とあるラーメン屋。主人は、ただ今入院中。店を任された息子。
近所の工場の従業員、常連さん達でにぎわう店内、そんな毎日の、何にも変わらない日々。
とそこに、幼い頃に生き別れになった、兄貴が現れる…。
久しぶりの再会。昔の記憶がよみがえる。「俺達どんな遊びしてたっけなぁ。
[チケット発売日] 会員12/8(火) 一般12/12(土)
2010年 2月5日(金)〜14日(日) 全12公演
【全席指定】 | 会員 前売3,150円・当日3,400円 一般 前売3,500円・当日3,800円 高校生以下前売・当日とも1,500円 |
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500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで) *未就学児は入場できません。 *2/6(土) 昼・夜のみ |
【作・演出】 | 田村孝裕 |
【出 演】 | ![]() 西山繭子 野本光一郎 和田ひろこ 恩田隆一 伊藤俊輔 宮澤大地 保倉大朔 高山のえみ 内山ちひろ 根岸季衣 |
大人の方にぜひ観ていただきたい、珠玉の舞台がここにあります。
2002年10月下北沢で上演され、ラーメン屋の2階を舞台に、家族の愛憎を丁寧に編み込まれた上質な会話劇で描き切り、ONEOR8の名を広く演劇界に知らしめるきっかけとなった「ゴールデンアワー」待望の再演です。
向田邦子原作の「思い出トランプ」の舞台化や、シアタークリエでの斎藤由貴主演の舞台の作・演出を務めるなど、ずっしりとした見応えのある舞台を作ることにかけては、若手髄一と評価されている田村孝裕とONEOR8。
公演に寄せて(作・演出:田村孝裕)
幼い頃の夜の思い出といえば「テレビの音」です。
テレビっ子だった私は「早く寝なさい」とよく親に叱られていました。
布団に入り、寝られないでいる私は隣の部屋から聞こえてくるテレビの音に一生懸命耳をそばだてていました。
そうやって流行の歌を楽しんだり、欽ちゃんに笑ったり、ラブシーンに興奮したりしたのです。もちろん、想像の中で。
実際に見るよりも面白さは半減しているのでしょうが、あのときのワクワク感は二度と味わえないに違いありません。
ONEOR8(ワンオアエイト)
1997年に舞台芸術学院の演劇部本科の同期生によって旗揚げ。ありふれた日常的空間を舞台に、普段は目を向けられることの少ない者や弱き者の存在を打ち消すことなく、その内面の本質を温かく見つめる作風で高い評価を得ている。
⇒ONEOR8 ウェブサイト http://oneor8.net/
Interview 『ゴールデンアワー』インタビュー
畳のぬくもりとか人のつながり、そんな昭和の良さを描いた作品。(根岸)
信頼する役者さんたちに出会えたから、面白くしてもらえるんじゃないかと…(田村)
ラーメン屋の2階を舞台に上質な会話劇が繰り広げられる珠玉の人間ドラマ『ゴールデンアワー』。
主演の根岸季衣さんと作・演出の田村孝裕さんにお話しを伺いました。
──根岸さんは2008年に田村さんと『思い出トランプ』(向田邦子原作、田村孝裕作・演出)でご一緒されていますが、その時の印象をお聞かせ下さい。
根岸:ご一緒するまでは不勉強で田村さんの作品を見ていなかったのですが、若さに惹かれて(笑)…やってみたら劇団の雰囲気が和やかで、かつ綿密にみんなで作っていく感じで楽しかったです。田村さんの演出は的確で深く突っ込むのに、雰囲気は和気あいあいで居心地がよかったです。
田村:ぼくは最初、遠い存在だったので、お会いするのが怖かったんです(笑)。稽古の初日から根岸さんは台本を完璧に読まれていて、「スゲーな。俺、何も言うことないよ。」という感じで…そのプレッシャーもあって、いつもは遅いのにあの時ばかりは台本も早く書けたんだと思います(笑)。その後も根岸さんの面白さに圧倒されて最初はダメ出しもほとんどしなかったですよね。
根岸:あの時は、初対面でいきなり本読み稽古でしたね。全く、どういうルックスかも知らないで…で会ってみてまず「ルックス的にOK!」みたいな(一同笑)。その後も好感度の高いまま物事が全部進みました(笑)。
それに田村さんは劇団員のみんなと相談しながら作っていて、団員も「お前、そうじゃないだろう」みたいな感じで…田村さんの才能はもちろんみんな認めていて、その上で平気で言える雰囲気があるのが素敵だな、と思います。最終的には田村ワールドになっていくんだけどそれを押し付けるんじゃなくて、合議制の中でやっていくみたいなところが。
──初演時(2002年下北沢で)の思い出は何かありますか?
田村孝裕田村:ラストシーンがちょっと特徴的になってますけど、あれは実はちょっと偶然の産物というか…最後のシーンでそれまでの印象とガラッと変えたくなって、本番間際の舞台打ち合わせも終わった後に、1枚書き加えたト書きがあのようになって…裏方はかなり大変だったんですけど、結果的に「こんなラストになるとは思わなかった」と意外に好評で、あの頃は劇団を始めて5,6年目でしたが、初めて評判がいいと感じられた作品でした。
──再演してみたいと思っていましたか?
田村:最近、自分が作ったも作品が使い捨てになってきてるな、という思いと、今の自分がやったらまた違うものになるんだろうな、という思いがあって、それで再演をしてみたいと思うようになりました。
──結構書き直しはされる予定でしょうか?
田村:そうですね…僕は基本的にその役者さんに当てて書くんで…。今回の根岸さんの役の場合は、根岸さんのイメージからは遠い感じなんですけど。
根岸:「思い出トランプ」の時はかなりくってかかっていくタイプの役だったので、そのテンションを保つのが結構つらかったんですけど、今回の役はボケた感じの役でほっとできて嬉しいです(笑)。私、稽古は大好きなんですよ。今回は楽しみながらゆったり作っていきたいな、と思います。
──根岸さんの役どころをもうちょっと説明していただけますか?
田村:お金に困っていて、生活、生きていくことに精一杯になっているおばちゃんの役です。そのおばちゃんが、若い人たちやその家族で経営しているラーメン屋さんにアルバイトに来て、すったもんだが起きる…そんな話です。
──見どころはどんな所でしょうか?
田村:僕の作品には郷愁とか家族間のつながりというものが色濃くテーマにあるのですが、それが強く出ている作品だと思います。初期の頃の作品ですし、そんなに書き手として上手くない、無駄もあったりすると思うんですが、あえて未熟な台本を役者さんたちにお渡しし、役者さん達に面白くしてもらいたい、という気になっています。7年前は、根岸さんやほっしゃんさんと出会えるなんて思ってもいなかったですけど、そういう方たちと出会うことが出来たという幸せな環境があるので、その方たちに頼って「僕、才能ないんですみません…みたいに。」(笑)
根岸:あら、人の乗せ方が巧みになっちゃて…絡め技みたい(笑)。書かれた本も十分ですが、この何年かで演出家としても巧みな方法をいくつも身につけられて、グレードアップしたものにしていかれる、ということですよね。
私は今回のお仕事のお話をいただいた時に「三鷹のホールは情熱的にお仕事をされている所だから」と聞いてお引き受けすることにしたんです。その情熱に接して純粋な気持ちで臨めたら、と思っています。
田村:最近暗い話題が多いですが、見終わったときに不幸せになる作品ではないと思います。暗い気持ちにはならないと思いますのでどうぞ安心してご覧下さい。
根岸:デジタル世代の田村さんが、私たちの世代では当たり前で懐かしむこともしないで過ごしてきたことをきちんと描いている。最近「昭和」を取り上げることが多くなってきていますが、畳のぬくもりとか人と人との触れあいみたいな昭和の良さを見直すことは世代を超えて出来ることですよね。