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企画展示 三鷹時代の佳品「善蔵を思ふ」―太宰治と葛西善蔵 が始まりました。

2014年2月11日太宰治文学サロン文芸担当(倉持)

 今回の企画展示は、三鷹を舞台とした短篇作品「善蔵を思ふ」の世界をご紹介します。昭和15年4月に雑誌「文藝」に発表されたこの作品は、太宰が敬愛する同郷の作家・葛西善蔵を念頭において書かれています。
 
昭和14年9月に三鷹に移り住んだ太宰は、明るく健康的な作風となり、「駈込み訴へ」「走れメロス」といった名作を多く発表しています。これらと同時期に発表された本作は一言も善蔵に触れず、それらしき人物も登場しません。この標題にはいかなる意味が込められているのでしょうか。

 「子をつれて」(大正7年)を発表し、文壇にその名を博した葛西善蔵の作風は破滅型私小説と称されています。「文芸の前には自分は勿論、自分に付随した何物をも犠牲にしたい」という苛烈な芸術至上主義者でした。葛西善蔵(明治21年~昭和3年)が肺の病によって満41歳で世を去ったとき、太宰は旧制弘前高校2年生(19歳)でした。一度も相見えることはありませんでしたが、『津軽』(昭和19年11月刊)の中で「津軽出身の小説の名手、葛西善蔵氏」と触れ、度々作品や書簡で言及しており、太宰の善蔵に対する理解は深いものでした。

 周囲に理解されなくても、〈路傍の辻音楽師〉のように自身の信ずる文学を貫こうとする決意。物質的な富や権力に拠らず、精神的な豊かさを求める〈心の王者〉。これらのフレーズが登場する本作は、度重なる心中未遂やパビナール中毒といった困難な時期から立ち上がり、三鷹から再出発をする太宰の心境を考える手がかりとなるでしょう。

 本展は、敬愛する同郷の作家・葛西善蔵に思いを馳せ、作家として再出発する姿を初版本などの資料とともに辿ります。この機会に三鷹で書かれた作品群を是非ご覧ください。

太宰治文学サロン

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東京都三鷹市下連雀3-16-14
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☎・Fax0422-26-9150
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