タンゴの革命家ピアソラが南米の文豪ボルヘスと手がけた幻の名作が今、蘇る!
小松亮太
レオナルド・グラナドス
本公演は終了しました
2012年 9月8日(土) 19:00開演
2012年
9月9日(日) 15:00開演
【全席指定】 | 各回 会員 S席 5,400円・A席 4,500円 一般 S席 6,000円・A席 5,000円 学生席4,000円 |
![]() |
500円、対象:1歳~未就学児、定員10名、要予約(2週間前まで) *未就学児は入場できません。 |
【出 演】 | 小松亮太(バンドネオン) レオナルド・グラナドス(歌、語り) 黒田亜樹(ピアノ) 近藤久美子(ヴァイオリン) 伊能 修(ヴァイオリン) 吉田有紀子(ヴィオラ) 松本卓以(チェロ) 田中伸司(コントラバス) 佐竹尚史(パーカッション) 真崎佳代子(パーカッション) 岡 北斗(オーボエ) 田場英子(ホルン) レオナルド・ブラーボ(ギター) 早川りさこ(ハープ) KaZZma, Sayaca ほか(コーラス) ほか |
【曲 目】 | 【第一部】 ドナート:淡き光に(ピアソラ編曲) コビアン:ノスタルヒアス(ピアソラ編曲) ユーマンス:月下の蘭(ピアソラ編曲) ピアソラ:リベルタンゴ(O・モンテス編曲) ※ギター&バンドネオンのみ ガーデ:ジェラシー(ピアソラ編曲) ロブレス:コンドルは飛んで行く(ピアソラ編曲) ピアソラ:バンドネオン協奏曲 【第二部】 ピアソラ(詞:ホルヘ・ルイス・ボルヘス): 『エル・タンゴ』(スペイン語上演) |
【関連プログラム】 | プレ・トーク ピアソラとボルヘス〜二人を虜にしたタンゴの魅力 |
風のホールでは昨年、タンゴの革命家アストル・ピアソラ生誕90年を記念して、タンゴシーンを牽引するバンドネオン奏者、小松亮太をメインアーティストに据えたスペシャル・ライヴとキッズ・コンサートを実施しました。そしてピアソラの没後20年の今年、小松亮太を再びメインアーティストに迎えて、ピアソラと南米を代表する文豪ボルヘスがともに手がけた隠れた名作、『エル・タンゴ』(全曲)を上演します。
この作品は、ボルヘスの詩や散文にピアソラが音楽をつけたものです。ボルヘスは、「ブエノスアイレスの夕暮れと夜がなかったらタンゴは生まれないだろうし、その空にはタンゴのプラトン的なイデアが、その普遍的形態が我々アルゼンチン人を待ち受けている」(『エバリスト・カリエゴ』岸本静江訳)と書いており、多感な少年時代をブエノスアイレスで送りました。両者のコラボレーションはこの作品一回限りで終わり、文字通り奇跡的な作品であったといえます。
その他には「リベルタンゴ」「バンドネオン協奏曲」やピアソラが編曲したタンゴの名曲がずらりと並びます。今回、小松亮太とニューヨークを拠点に活動する歌手レオナルド・グラナドスほか第一線で活躍する音楽家たちが集結し、このアルゼンチンが生んだ音楽と文学の高度な芸術的結晶の全貌に挑みます。希少なこの機会を、どうかお聴き逃しなく!
【2012年9月8日、9日開催『エル・タンゴ』出演者 松永孝義さんのご逝去について】
今回、『エル・タンゴ』公演に出演が予定されており、MUTE BEAT、Lonesome Stringsのメンバーで数多くのセッションで活躍したベース奏者、松永孝義さんが7月12日(木)に逝去されました。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
なお、ベース奏者の方が決まり次第、当財団ホームページならびに公式ツイッターでお知らせいたしますので、今しばらくお待ちください。
『エル・タンゴ』全曲を体感できるのは三鷹だけ!
まず最初にアピールしたいことは、この7曲から成る『エル・タンゴ』の組曲(と言っていいのかどうか)を全曲揃えて、生演奏で聴けるのは世界で本公演だけ、という事実である。ピアソラ自身もスタジオレコーディングだけで、ライヴでの演奏を行った形跡はない。
というよりも、そもそも彼はライヴのための作品としてこれを発表していない。キンテート(五重奏)と朗読(または歌)、という編成がしばらく続いたかと思うと、ある曲では突如ホルンやオーボエが豪華に加わったりという、スタジオワークならではの利点がフルに活用されているのだ。
そのため書きたい放題な、フィクション性に満ちた色づかいを実現している反面、ライヴでの公演は困難を極める。いったい誰が組曲の中の、5分に満たない1曲のためにハープ奏者やコーラス隊をわざわざ呼ぶものか。どこの主催者がそんな浮世離れした贅沢を許す? 音楽にはお金がかかるものなのだ。
しかし、だ。ピアソラの没後20年を記念し、その「あり得ない」タンゴ絵巻をライヴで体験していただける日がついに来たのだ。
もう一度言いたい。世界広し、そしてピアソラファン多しと言えども、『エル・タンゴ』全曲を体感できるは三鷹だけなのだ!
1965年にアルバムとしてリリースされた『エル・タンゴ』を音楽のみならず
文学的見地からも探訪するプレ・トークを開催します。
【日 時】 | 2012年 8月28日(火) 19:00開演 |
【会 場】 | 三鷹市芸術文化センター 2階会議室 |
【料 金】 | 会員1,800円 一般2,000円 |
【出 演】 | 小松亮太(バンドネオン奏者)、 野谷文昭(ラテンアメリカ文学研究・東京大学大学院教授) |
【申込開始日】 | 会員6/5(火) 一般6/8(金) *電話予約のみ |
【申し込み方法】 | 要電話予約 Tel.0422-47-5122 |
アストル・ピアソラ没後20年記念公演に際して、タンゴの革命児ピアソラがアルゼンチンの文豪ボルヘスの世界からインスパイアされて作曲した幻の名作『エル・タンゴ』を甦らせる小松亮太さんに、その意気込みを伺いました。
──ここには細工の美しいバンドネオンがありますけども、年代物でしょうか?
そうですね、ある程度良いバンドネオンというのは、基本的には戦前の楽器なんですよ。これは第二次世界大戦前のドイツ製のですね。(即興でバンドネオン演奏)こんな音です。
──時代を感じさせる音と言うのでしょうか。その空気の出し入れの音まで響いてきて。
このスーハースーハーっていう雑音が味だって言われています。
──また、このボタンも順番に並んでいるわけじゃないんですよね?
そうなんです、例えば(実際に音を出しながら)ここが「ド」なんですよね。「レ」は近くかと思うとこんなに離れたところが「レ」なんです。「ミ」も離れた場所で…。かと思うと「ミ」の隣が「ファ」だったり。こういう規則性のないボタンの配置で、覚えるしかないです。パソコンのキーと同じで、やっているうちに覚えろ、と。
──さて、今回ピアソラの幻の名作と言われている「エル・タンゴ」をご披露されますね。
そうですね。アストル・ピアソラと言えば「リベルタンゴ」の作曲家として今の日本で一番有名なタンゴの作曲家だと思いますが、亡くなってから有名になったんですよね。彼の曲の中には、有名なものもあればそうでないものも、様々な曲があります。その中にかなり大がかりで普通あまりやらせてもらえない曲というのが、いくつかあるんですけども、今回の「エル・タンゴ」という曲が、その代表のようなものです。何しろこの曲を生で全曲演奏するのは、たぶん今回が世界で初めてです!
──なぜ、これまで演奏されてこなかったのでしょうか?
「エル・タンゴ」は組曲なんですけど、1960年代にピアソラが発表した時には、LPレコード(アルバム)として発表したわけなんですよ。コンサートでやるためのものじゃなくて録音だから、例えば1曲1曲が全然違う楽器編成であったり、コンサートでは全然出来ないようなことをしても、別々に録音すれば大丈夫だからと、好きなように作った曲なんですよ。
──ということは舞台では、不可能なんじゃないですか?
やりにくい、ほぼ不可能です。たった5分間の曲だけにコーラス隊が入っていたり、3分の曲だけにホルンが入ってきたり、たった2分の曲にハープが入ってきたりとか…。そういうことは、コンサートでは大がかりなのに効率が悪すぎて、普通やらせてもらえないんですよ。だから今回、ピアソラ没後20年記念のこの企画で、この曲を候補に挙げた時に、三鷹の財団さんが、「ぜひやりましょう」と言って下さって本当に感謝です。
──その「エル・タンゴ」という曲は、ボルヘスという方の詩や散文に、ピアソラが曲を付けたわけですが…
ホルヘ・ルイス・ボルヘスは、アルゼンチンの散文や詩の作家です。詩の世界でも映画の世界でも南米のラテンアメリカの世界っていうのはすごくシュールなんですよね。これを何語に訳しても、日本語でも、英語でも、あるいはスペイン語のままアルゼンチンの人が読んでも、何を言っているのか今ひとつ具体的にはわからないんですよ(笑)。
──そのボルヘスの詩や散文も、ピアソラの中を通すことで、世界が広がるのですね?
ボルヘスの描いた幻想的で、知的で哲学的でもある文学の世界にピアソラが音楽を付けたんです。ボルヘスの散文にメロディを付けて歌にする、あるいは詩の朗読があり、その後にピアソラが描いた曲を入れる、そういう風にアレンジした組曲なんですけどね。
その詩を訳したものをパッと外国人が読んでもいきなりはわからないかも知れないけれども、音楽が付くことによって、世界観が急に伝わったりするんですね。音楽というのはそもそも抽象的なものを、“スーッ”と心の中に入れてしまうものなので…。とにかく綺麗な曲なのは確かです。それは自信を持ってお伝え出来ますので、ぜひいらしてください。三鷹で奇跡を起こします!
──他で演奏されていない曲という事でご苦労もあったのでは?
まず、楽譜がないんですよ。あると聞いていたのですが、届いてみたらなんと3分の1くらいしかなかったんです。それで、これから僕がピアソラのCDを聴いて全パートの楽譜を書きます。僕はこれまでも、アルゼンチンの人から頼まれて、なくなった楽譜を書き起こしたりしたことも多かったですし、そういうことは時間さえあれば簡単なんですけど。
──小松さんは2011年に「俺のピアソラ」というCDも出していらっしゃいますが、小松さんにとってのピアソラとはどのような存在なのでしょうか?
僕はとにかくタンゴが好きなんです。アストル・ピアソラっていう人の曲ももちろん好きなんですけれど、その源流となっているトラディショナルなタンゴの部分が好きなんですよ。今回のコンサートでも、第一部ではアルゼンチンタンゴのいわゆる名曲の数々も演奏します。そして21分かかるバンドネオン協奏曲も。
最近、アストル・ピアソラの曲を演奏するのはほとんどクラシック音楽の演奏家になっています。それもいいのですが、やはり我々みたいなタンゴの専門家がやっているピアソラの曲の演奏というのを、もっともっとみなさんに聴いてほしいなと思います。
──どんな感じになるかすごく楽しみです。バンドも、今回は大きな編成になりますね。
はい。歌と語りには、ニューヨークを拠点に活躍中のレオナルド・グラナドスさん。それから管楽器に弦楽器、ハープにコーラス、打楽器もあります。
──今回は、関連プログラムとして「ピアソラとボルヘス」というテーマでプレ・トークもありますが、こちらはどんな内容になりそうですか?
南米文学に詳しく翻訳などをされている、野谷文昭さんと対談させていただきます。プレ・トークではざっくばらんに音楽の世界の話をしたいと思います。でも僕は文学者ではないので、わからないことはわからないって正直に言いますので(笑)。お楽しみいただきたいと思います。
──最後に改めて、「ここだ!」という聴きどころは?
9月の8日と9日、地球上で本当に“三鷹でしか”有り得ないコンサートです。僕も気合入れていきますし、それからアルゼンチンの人も本当はこういうのを聴きに来たほうがいいんじゃないかと思うんで(笑)。
どうぞ、その体験者、目撃者になっていただきたいと思います。ぜひ、いらしてください。