| この緞帳の絵を見る人は、何を見ることになるのでしょうか。中央をしめる大きな形を、鳥、あるいは魚、とりわけエイなどを連想する人は決して少なくないと思います。また、その画面空間を空や海の中と思う人も多いことでしょう。 |
| それにしても、絵が写実的に描かれているのではないことに気づくはずです。そのことから、この絵の場合、鳥や魚そして空や海中と思ったところで、観賞すべき問題は解決されず、重要なのは、描かれている形や線とその色彩を、形は形として、線や色もそれ自身として、そしてそれらが一体となった純粋な造形として見ることなのです。 |
| それは、この絵が抽象絵画だからです。いうまでもなく抽象絵画は具象絵画(写実絵画)と違って、現実に存在するものを描写することを否定し、描きたい形、塗りたい色を、描きたいままに塗りたいままに、つまり何にもとらわれることなく思うがまま自由に作品化するものです。 |
| もちろん抽象絵画にもさまざまなタイプがあるわけで、画家各人が独自な絵画世界を発明発見しなければならないものです。そこではどんなことが表現されているのか、それが言葉でいい表せないような場合でも、見る人に与える感動があればいいのです。芸術のメッセージとは、そういうところにあると私は思っています。 |
私が緞帳として作った作品も、そのような抽象絵画のセオリーで作りました。ところが、その結果がなぜか自然の存在を連想させることになったのでした。十二年ほど前から始めることになったこのタイプのシリーズの中でも、とりわけその傾向の強い作品となりました。 |
現実とは無関係に、と思いながらも、私の創造力やさまざまな意識のどこかに、睡眠時の夢がそうであるように、現実(自然)と繋がっているところがあるというべきかもしれません。
(平成7年11月) |