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有三のエッセイ「一即多」(『悲劇喜劇』昭和4年4月)には、息子がポケットの中からミンツ菓子をわけてくれてミンツの味を堪能した場面があります。もしそんなふうに一作品か、その一部で、その作家を味わいつくすことができたら至上の読書といえるでしょう。 |
ですがその一方で、「独逸の戯曲家」(『文芸講座』大正14年6月)で有三が引用した「世界つてどんなものか、まづそれを答へてくれ給へ。さうしたら、ゲーテはどういふ人物かわたしもそれを話さう。」というハイネの言葉に、読書家の共感は集まると思われます。 |
読書の積み重ねで、多角的な作家の仕事がすべて見えてくると人は考えがちですが、逆に読み進めるうちに、作家の姿をすっかり見失っていることさえあります。 |
本展は、あえて一作品や個々の観点からはなれ、有三の全貌を見ようと1974年(享年86歳)までの60余年の作家生活を総覧いたします。 |
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【展覧会のお知らせ】 |
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山本有三展<教訓と教養> 2004年12月21日(火) より |
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